売出しと私売出し(5)


証券取引等監視委員会の寺田総務課長が東証メールマガジンに掲載されています。前回紹介した記事の続きです。

無届社債の募集に関する寄稿です。無届社債の募集は、それだけで金融商品取引法の開示規制違反で、最長5年の懲役刑ですが、東証メールマガジンの寄稿によると、次のように、悪質だったようです。以下は、抜粋です。

「社債の契約やその解除に当たり、消費 者に対して行った説明として、「元本は保証する」「価格が○倍になる」など、 本来将来における変動が不確実な価額について断定的判断を提供するような勧 誘方法の事例が挙げられていることや、既に社債を購入した顧客に対し、社債 の利払いが期限までに履行されない事例が確認されていること」

「元本保証」とか「価格が何倍になる」と説明して、投資家に取得勧誘を行ったということ、さらに、利払日が来ても、実際には利払いがなかったことが指摘されています。本当に「価格が何倍になる」と説明したとすれば、それは、断定的判断の提供です。

ただ、金融商品取引法が断定的判断の提供を禁じている対象は、金融商品取引業者等の行為のみですから、金融商品取引法違反ではありません。「消費者契約法」によって、消費者である投資家が取引を取り消し得るにとどまります。

利払日に利払いがなかったというのは、債務不履行ですから、民法によって、解除し得るにとどまります。

ですから、投資家が救済されるためには、自分で取消しとか解除とか、何らかのアクションを起こさないといけません。

取消しや解除は、確かに法律上、投資家に与えられた権利ですが、言うは易し、行うは難しですよね。

かといって、弁護士に依頼するのも敷居が高いし、お金もかかると考える方が多いでしょう。結局、投資家は、泣き寝入りで終わってしまうのが現実です。

ですから、そもそも論として、「何倍になると聞いたら、絶対に投資しない!」ことが、消費者にとっての最大の防御方法です。

円金利がほとんどゼロである今、投下資本が何倍にもなって戻ってくる元本保証の金融商品などありえません。うまい話はない!ということです。

投資家にとって大切な点なので、繰り返します。

元本保証で何倍にもなって戻ってくる金融商品は絶対に存在しない!

絶対にない!というのは断定的判断の提供ですが、これは断定できます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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