行政処分事例集(1)


今日から証券会社に対する行政処分事例をシリーズで紹介します。

行政処分の事例に事欠かないのは、「虚偽又は誤解を生ぜしめる表示」です。

条文を確認しておきましょう。以下の事項が禁止されています(金商業等府令117条1項2号)。

「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」

これとは別に次の行為が禁止されています(金商法38条1号)。

「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」

比較するとわかるのですが、いわゆる「虚偽又は誤解を生ぜしめる表示」の禁止は、①対象は、顧客に限っていない、②虚偽のみならず、誤解を生ぜしめる表示も禁止している、③「表示」を禁止している3点で、「虚偽を告げる行為」と異なります。③の「表示」は「告げる」ことも含む、もっと、広い概念です。

2つの違いの最も重要な点は、①の対象を顧客に限定していないことです。例えば、不特定多数の人に、パンフレットを配布した場合、そこに虚偽又は誤解を生ぜしめる表示があるとアウトだということです。

また、表示の相手が、適格機関投資家に限定されていたとしても、虚偽又は誤解を生ぜしめる表示をしたらアウトです。

虚偽又は誤解を生ぜしめる表示は、なぜ禁止されるのでしょうか。

「それりゃ、ウソはいけないでしょ」というのは道徳的な話。法令なのですから、目的(実現したい価値)があります。

虚偽にせよ、誤解を生ぜしめる表示にせよ、投資家に投資判断を誤らせる危険があります。誤った投資判断に基づく投資が行われると、金融商品取引法の目的である「公正な価格形成」がゆがめられます。だから、禁止されるわけです。ですから、「重要な事項につき」誤解を生ぜしめる表示が禁止されていますが、ここでいう「重要な事項」というのは、「投資判断に影響を与える事項」の意味であることがわかります。

事例を見てみましょう。

なお、ここに記載する行政処分事例はすべて公表されている資料のみを参照していること、私自身がかかわった事例はないこと、したがって、私は事例の詳細はわからず、正確性は保障できないことにご留意ください。

プリンストン債
記憶に新しい方もいらっしゃると思いますが、これは、詐欺事件です。虚偽・誤解を生ぜしめる表示としては、販売証券会社であるクレスペール証券会社東京支店が、私募外債であったプリンストン債の分別保管がされていると表示していたにもかかわらず、実際にはされていなかったこと、また、当局の承認がないにもかかわらず、当局の承認が得られた商品であると記載した資料を顧客に配布していたことがあげられます。

プリンストン債は、クレスベール証券の実質的な親会社であったプリンストン・エコノミックスのオフショアのペーパーカンバニーが発行したドル建て私募債でしたが、結局、プリンストン・エコノミックスの会長が米国で証券詐欺で逮捕され、リベートをもらっていたヤクルト本社の副社長が脱税と商法特別背任の罪で起訴された事件です。高杉良の小説「小説ザ・外資 (講談社文庫)」のモデルになっています。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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