行政処分事例集(2)


前回の続きです。

虚偽又は誤解を生ぜしめる表示で行政処分にいたった事例を見ていきましょう。

INGベアリング証券
私の記憶が正しければ、アナリスト・レポートの記載内容が問題になったのは、今のところ、この事例のみです。アナリスト・レポートに記載された複数の数値等に誤りがあったことが、重要な事項につき誤解を生ぜしめる表示であると指摘されたものです。詳細は、こちらをご覧ください。

この事例の問題点は、誤った数値等が記載されたアナリスト・レポートで集客し、対象銘柄の取引を成立させていた点です。結局、市場価格をゆがめる行為を引き起こしたことから、原因となったアナリスト・レポートの記載が問題視された事例です。

コスモ証券
金融庁の監督指針にも取り上げられ、また、現在では当時のような条件決定方法が実務で採用されなくなっていることから、今は見なくなった事例です。詳細は、こちらをご覧ください。

他社株転換社債の売出しにあたり、条件決定日以後の売出期間中に株価が下落し、現金償還されるための条件まで株価が戻った場合、株券を買っていた方が、この他社株転換社債を買った場合よりも有利であったにもかかわらず、そのような重要な事項つき誤解を生ぜしめる表示をしたとして行政処分を受けた事例です。

注目すべき点は、この事例は、積極的に誤解を生ぜしめる表示をしたのではなく、説明すべきであったのにしなかったという「不作為」を誤解を生ぜしめる表示とした点です。

もし、投資家にきちんと説明されていれば、同じ価格でこの他社株転換社債を購入する人はいなかったはずなので、他社株転換社債の価格は下がっていたはず、したがって、他社株転換社債の公正な価格形成を阻害したという点が問題です。

みずほインベスターズ証券
監視委員会の検査当時の本店営業部長が、日経225連動型ETF(上場投信)の買いと、日経225株価指数オプション取引(コール・オプション)の売りとを組み合わせた投資方法を顧客に推奨した際、必ず、高い投資リターンが得られるとの誤解を生ぜしめる表示をしたことが、行政処分の対象となった事例です。詳細は、こちらをご覧ください。

要するに、買いと売りを同時に仕掛けているので、コール・オプションの売りによるプレミアムが利益になり、毎月繰り返せば、プレミアム×12ヶ月のハイリターンが期待できるという説明をしたというものです。

こういう投資方法を推奨したという問題よりも、年齢も高く、オプション取引の経験もない投資家に勧誘し、取引を成立させていたことが、実質的な問題であった事例です。

ETFとオプション・プレミアムの価格形成過程に、間違った情報が反映され、したがって、公正な価格形成を阻害したという点が問題です。

なお、当局は、公正な価格形成の観点から問題視したというより、投資家保護の観点から問題があったととらえていることは、補足説明で投資家層について言及していることからわかります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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