行政処分事例集(4)


虚偽又は誤解を生ずべき表示と同様、事例に事欠かない法令違反は、「特別の利益の提供」です。虚偽又は誤解を生ずべき表示も多様ですが、特別の利益の提供も多様です。

金商法と証取法の違い
金融商品取引法の条文を見てみましょう。

「金融商品取引契約につき、顧客若しくはその指定した者に対し、特別の利益の提供を約し、又は顧客若しくは第三者に対し特別の利益を提供する行為(第三者をして特別の利益の提供を約させ、又はこれを提供させる行為を含む。)」(金商業等府令117条1項3号)

証券取引法の規定と比較してみましょう。証券取引法の規定は以下の通りです。

「有価証券の売買その他の取引又は有価証券指数等先物取引等、有価証券オプション取引等、有価証券店頭デリバティブ取引若しくは外国市場証券先物取引等につき、顧客に対して特別の利益を提供することを約して勧誘する行為」(行為規制府令4条2号)

提供行為の禁止
長いので読みにくいかもしれませんが、金融商品取引法と証券取引法で決定的に異なる点は、証券取引法では、特別の利益の提供を「約して勧誘する行為」のみが禁止されていましたが、金融商品取引法では、追加的に、特別の利益を「提供する行為」も禁止された点です。

言い換えれば、証券取引法では、特別の利益の提供を約束していなかったけれども、事後的に、特別の利益を提供する行為は、禁止されていませんでしたが、金融商品取引法では、そのような行為も禁止されたということです。

これは、大きな改正です。実務即して言うと、要するにこういうことです。証券取引法では、顧客に対し、取引をしてくれた見返りに特別の利益を提供しても、例えば、大口の取引をしてくれたので、次の取引で、普段ならしない手数料の減額をしても、手数料の減額は特別の利益の提供になりませんでしたが、金融商品取引法では、そのような行為は、特別の利益の提供であるということです。

第三者との関係
次に異なる点は、証券取引法では、「証券会社」が「顧客」に対してする行為が禁止されていたところ、金融商品取引法では、「証券会社又は第三者」が「顧客又は第三者(約束の場合は顧客が指定した者)」に対してする行為が禁止されたことです。

典型的には、証券会社が顧客と取引をする際、親銀行に、顧客に対して特別の利益を提供させる行為や、証券会社が、顧客の親会社や子会社に特別の利益を提供する行為が禁止されました。

問題は、証券会社が顧客と取引を成立させた際、顧客を紹介してくれた者に対して、法外な手数料を支払った場合、手数料を支払った行為が特別の利益の提供に該当するかどうかです。

文字通り読むと、金融商品取引法は、「金融商品取引契約につき、証券会社が、第三者に対して特別の利益を提供する行為」を禁止していますので、このような場合も含まれることになりますが、みなさんはどうお考えになるでしょうか。

次回は、この点について検討しますので、みなさんも、お考えください。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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