引受け(1)


平成21年の金融商品取引法の改正に伴い、金融商品取引法の「売出し」の定義が変更されました。既に、実務的には、改正後の定義に従った事業が行われていることと思いますが、ここであらためて、売出しも含め、金融商品取引法の用語の定義を、実務的に、わかりやすく、シリーズで説明します。

最初は、関連条文が飛んでいるために、理解するのが難しくなっている引受けについて、説明します。

<条文>
まず、引受けの条文を見てみましょう。金融商品取引法2条6項です。正確にいうと、「引受け」の定義はなく、定義されているのは「引受人」です。カッコが多い条文ですので、カッコを外して抜粋します。

「この法律において「引受人」とは、有価証券の募集若しくは売出し又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に際し、次の各号のいずれかを行う者をいう。」

そして、各号の行為が掲げられますが、これらの行為が「引受け」です。

各号を抜粋します。

1 当該有価証券を取得させることを目的として当該有価証券の全部又は一部を取得すること

2 当該有価証券の全部又は一部につき他にこれを取得する者がない場合にその残部を取得することを内容とする契約をすること

以上、読んでわかる通り、意味不明です。

条文を素直に読むと、「募集」「売出し」「私募」「特定投資家私売出し」の際に行われる各号に掲げる行為が、何でも引受けに該当するかのように読めます。でも、実際には違います。

日本証券業協会の外務員必携の説明が一番わかりやすいです。以下、抜粋します。(外務員必携1 平成23年版 57頁)

「引受けとは、有価証券の募集若しくは売出し又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に際し、発行体・売出人のためにその販売を引き受けることをいいます」

発行者が有価証券の募集か私募を行うときには発行者に代わって、売出人が有価証券の売出しを行うときには売出人に代わって、有価証券の販売を引き受ける行為が「引受け」だということです。正確ではありませんが、根幹はまったくその通りです。

正確な意味は、次回以降、みていきます。

なお、「特定投資家向け売付け勧誘等」に際して行われる引受けは、実務的に重要性が劣るため、以後も省略します。また、はたして、私募に関して引受けを概念する意味があるかどうかは甚だ疑問ですが、金融システム改革法で証券取引法の大改正が行われた際、このように整理されました。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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