有価証券の引受け


金融商品取引法には、わかりにくい概念がたくさんありますが、その中の一つは、「有価証券の引受け」です。なお、金融商品取引法の引受けの意味は、会社法の引受けの意味とまったく違います。会社法で引受けというと、募集株式の発行の割当を受けることなどを引受けといいますが、金融商品取引法にこのような概念はなく、金融商品取引法の引受けの意味は、会社法の引受けの意味とは、まったく共通点がありません。

<有価証券の引受け>
金融商品取引法で「引受け」とは、募集、売出し、私募、特定投資家向け売付け勧誘等に伴って行われる行為や契約です。募集、売出し、私募、特定投資家向け売付け勧誘等の意味は説明しましたね。

株式会社が株券を募集で発行するとき、募集とは50人以上に対して行う取得の申込みの勧誘ですから、株券を発行する株式会社が出資者を探すよりも、多くの投資家を顧客に持っている証券会社に出資者を探してもらう方が効率的です。株式会社が社債を私募で発行するときでも、証券会社に社債を取得する者を探してもらう方が効率的であるときが多くあります。

<買取引受け>
株式会社が募集で株券を発行するとき、証券会社は50株の株券を取得したいという投資家を既に知っていた場合、発行者である株式会社に「50株発行してください。まず、当社で50株を取得して、投資家に50株を取得させます。」といって、投資家に50株を取得させることができます。

このように「有価証券を他人に取得させることを目的として、有価証券をいったん取得する行為」が、引受けです。株式会社が発行する50株の株券を投資家に取得させることを目的として、50株の株券をいったん取得する行為は引受です。要するに、他人に取得させるためにいったん自分で取得する行為を引受けといい、いったん自分で取得する者を「引受人」と呼びます。

<残額引受け>
引受けにはもう一つ別の方式があります。株式会社が「2000株を新たに発行して1億円を調達しよう!」と株主総会や取締役会で決定したとき、1億円がどうしても調達したいと思えば、「もし、売れ残りが出たときには私が残部を取得します」といってくれる者と「残部取得契約」を結んでおけば安心です。

このように「発行予定額の全部または一部、取得者が現れなかったときには、私が残部を取得します」という内容の契約を結ぶことも引受けです。株式会社が2000株の株券を発行する際、「残部が出たら私が残部を取得しますから、必ず、調達したい金額を調達できることを保証します」という契約を発行者である株式会社と結ぶことを引受けといい、このような契約を結ぶ者を「引受人」と呼びます。

<会社法の総数引受契約>
会社法で、募集株式などの総数の引受けを行う契約が規定されていますが、このような総数引受契約も、金融商品取引法の引受けとは異なります。金融商品取引法では自己株式は募集の対象とはならないという意味で、そもそも募集株式の意味が会社法と金融商品取引法では異なります。また、金融商品取引法の引受けは、総数の引受けを行うことを目的とするものではなく、他人に取得させることが大前提で、他人に取得させるために取得したり、他人に取得させようとした結果残部が出たら取得したりすることも目的に取得する行為が、金融商品取引法の引受けだからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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