引受け(5)


前回の続きです。

引受けは、第一種金融商品取引業です。引受けには、元引受けとそれ以外の引受け(「下引受け」とここでは呼ぶことにします)があり、元引受けには、リスクの高い元引受けとそれ以外の元引受けがあります。前回は、ここまで説明しました。

なお、引受けは第一種金融商品取引業ですから、ここからは、金融商品取引業者等を「証券会社」と呼ぶことにします。

<引受けを分類する意義>
引受けを「リスクの高い元引受け」「それ以外の元引受け」「下引受け」に分類する意味は、証券会社の資本金規制にあります。

リスクの高い元引受けを行う証券会社の最低資本金額は30億円、それ以外の元引受けを行う証券会社の最低資本金額は5億円、下引受けしか行わない証券会社の最低資本金額は5千万円です。リスクが高いほど、要求される資本金額が高くなっているわけです。

<元引受け>
前回の復習も兼ねますが、元引受けとは、発行者又は所有者から、直接、有価証券を取得とする行為です。つまり、直接、発行者又は所有者と接点のある引受けのことを「元引受け」と呼びます。

<リスクの高い元引受け>
リスクの高い元引受けとは、発行者又は所有者と元引受契約の内容を確定するための協議を行う証券会社が行う引受け行為のうち、100億円超を引き受ける行為です。大型起債や公募増資の幹事証券会社の引受けがそうです。(本来的には)発行者又は所有者と協議の上、100億円超を引き受けるから、リスク(損失の危険)が高いわけです。

<それ以外の元引受け>
リスクの高い元引受け以外の元引受けとは、1.発行者又は所有者と協議を行わない証券会社の引受けか、2.協議を行っても、引受シ団の引受総額が100億円以下における引受け、又は、3.引受総額は100億円超で、他の証券会社と共同して協議を行う場合であって、自己の引受額が100億円以下の引受けです。

この定義は、大型起債や公募増資の幹事証券会社の引受け行為の実態を表現するために、技巧的になりすぎ、実務には影響がありませんが、理解できない点があります。(平成19年7月31日公表の金融商品取引法制に関するパブリックコメント回答146頁をご参照ください)

<下引受け>
下引受けは、元引受け以外の引受けを指しますから、1.発行者又は所有者と直接の接点のない引受け、つまり、元引受けをする証券会社から再引受けをする行為と、2.売出人が金融商品取引業者等の売出しにおいて引受けをする行為のことです。

<まとめ>
引受けの定義をまとめると以下の通りです。

引受けは、募集か私募を行う発行者から、又は、売出しを行う売出人から有価証券を取得する行為であり、買取引受けと残額引受けがある。

引受けは、いずれも第一種金融商品取引業であり、証券会社が行う引受けは、「リスクが高い元引受け」「それ以外の元引受け」「元引受け以外の引受け」(下引受け)の3つに分類され、リスクが高いほど最低資本金額が高くなっている。

引受けに関する条文は、金融商品取引法及び政令・内閣府令でも飛んでいるので、わかりにくいです(目論見書の交付義務に関する条文にまで影響しています)。まずは、全体像をつかむことが大切です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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