売出しに該当しない売付け(2)


「売出しに該当しない有価証券の取引」の続きです。

<外国証券業者の行為>
外国で有価証券関連業を営む「外国証券業者」が、金融商品取引業者等か適格機関投資家に対して、外国で既に発行された有価証券を売付ける行為も、売出しに該当しません。

ここは、少し説明が必要です。

有価証券の売買や有価証券関連デリバティブ取引を顧客相手に行うためには、金融商品取引業の登録を受ける必要があります。ということは、外国で、金融商品取引業を行っている会社が、国内で、国内の投資家に対して、有価証券の売買や有価証券関連デリバティブ取引を行うためには、金融商品取引業の登録を受けなければできないことになります。

例外として、国内の金融市場の活性化という政策的判断から、外国で有価証券の売買や有価証券関連デリバティブ取引を事業として行っている「外国証券業者」は、登録を受けなくても、一定の取引ができることになっています。

外国証券業者に認められている行為は、証券会社や、政府、日銀、銀行等を相手方とする有価証券の売買や有価証券デリバティブ取引などです。

このうち、外国証券業者が、金融商品取引業者等や適格機関投資家に外国で既に発行された有価証券を売付ける行為は、勧誘の相手方の数が50人以上になっても、「売出しに該当しない有価証券の取引」だということです。

誤解のないようにしたい点ですが、ここでいう、外国証券業者が外国で既に発行された有価証券を適格機関投資家に売付ける行為は、いわゆる、「プロ私売出し」のことではありません。ですから、プロ私売出しのときのように「譲渡制限」(転売制限)をつける必要はありません。というより、譲渡制限をつけていけません。

外国証券業者が、譲渡制限をつけずに販売した外国証券のことを「譲渡制限のない海外発行証券」と呼びますが、外国証券業者が、譲渡制限のない海外発行証券を、金融商品取引業者等や適格機関投資家に売付ける行為が「売出しに該当しない有価証券の取引」、つまり、単なる「売り」に分類されているのです。

<注意>
注意しなければならないのは、外国証券業者による譲渡制限のない海外発行証券の適格機関投資家に対する売付けは、すべて売出しに該当しない有価証券の取引として適法かというと、そうではないという点です。

なぜなら、外国証券業者が、直接、売付けの相手方とできる投資家は、証券会社や銀行等一定の機関投資家に限られ、適格機関投資家の範囲より遥かに狭いからです。(施行令17条の3・1号)

ですから、例えば、投資事業有限責任組合は、適格機関投資家ですが、外国証券業者が、直接、売付けの相手方とできる投資家ではありませんから、外国証券業者が、直接、投資事業有限責任組合に、(譲渡制限があってもなくても)有価証券の売付けを行うことは、売出しの定義以前の問題として、金融商品取引業者として登録を受けていない限り、そもそも、違法です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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