売出しに該当しない売付け(3)


前回の続きです。

卸し販売
卸し販売については、まず、条文をご覧ください。カッコが多いので、外します。

-引用-
譲渡制限のない海外発行証券を取得した金融商品取引業者等又は適格機関投資家による他の金融商品取引業者等に対する当該譲渡制限のない海外発行証券の売付けであって、当該売付け金融商品業者等より当該譲渡制限のない海外発行証券の銘柄、数その他の内閣府令で定める事項が認可金融商品取引業協会に報告されるもの
-引用終わり-

何ともわかりにくい書き方です。

カッコを外しているので、引用からはわかりませんが、要するに、譲渡制限のない海外発行証券を、証券会社に卸す行為は、売出しに該当しない有価証券の取引だということです。

「譲渡制限のない海外発行証券」の意味は、前回説明しました。外国で既に発行され、譲渡制限(転売制限)をつけずに販売された有価証券のことです。

譲渡制限のない海外発行証券を証券会社に卸す行為は、どうして売出しに該当しない有価証券の取引として認められるのでしょうか。

理由は、単純です。卸販売なので、仕入れた証券会社は、他の投資家に販売するわけですが、そのとき、卸先(仕入れた)証券会社は、譲渡制限をつけて販売するか、法定開示を満たして売出しを行うか、いずれかの選択をするからです。別の言い方をすると、卸先(仕入れた)証券会社が、開示規制を満たすからです。

なお、卸販売をした証券会社、又は、卸販売をしたのが証券会社以外の適格機関投資家の場合は仕入れた証券会社は、卸販売の対象となった有価証券の銘柄等を日本証券業協会に報告しなければなりません。

投資家による売買
最後に、投資家による売買です。

投資家による譲渡制限のない有価証券の売買は、売出しに該当しない有価証券の取引です。

私募又は私売出しにより譲渡制限(転売制限)が付いている有価証券の売買は、該当しません。譲渡制限が付いている有価証券は、譲渡制限にしたがって転売されるのですから、売出しに該当する可能性がないため、当然の規定です。

具体的には、例えば、売出し発行された株券を取得した投資家が、株券を売付ける行為は、売出しに該当しません。

「じゃあ、いつ売出しになるのか?」

所有者が、発行者、発行者関係者、金融商品取引業者等の場合にのみ、売出しになります。所有者がこれらの者である場合には、売出人と投資家の間に情報格差が生じる可能性があるので、目論見書を作成させるべきであるから、売出しになります。

この規定は、平成21年改正前金融商品取引法では、有価証券の所有者が行う50人以上に対する売付け勧誘等を、一律「売出し」と規定していたものを、情報格差のない場合には、売出しから除外するとしたもので、開示規制の緩和につながっています。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード