私売出し


私売出しについて、少し触れておきます。

<私売出しの概要>
最初に、「私売出し」という用語は、金融商品取引法にはないという点に注意です。「私募」という用語は、「募集ではない」新発の発行方法として、金融商品取引法に用語が定義されていますが、「私売出し」という用語はありません。

私売出しという用語が金融商品取引法にない理由は、簡単です。私売出しとは、結局、単なる「売り」だからです。不特定多数に売付け勧誘等する行為は「売出し」であり、用語が定義されていますが、売出し以外の売付けは、単なる「売り」ですから、「私売出し」も単なる「売り」であるわけです。

では、どうして「私売出し」という言葉が存在するのか。それは、売出しに該当しない「外国証券」の売付けを定義する言葉があった方が、説明上、便利だからです。

<私売出しの対象>
私売出しの対象は、外国証券です。国内で発行され、国内で勧誘が行われた内国証券は、原則として、含みません。理由は簡単です。国内で発行されて国内で勧誘が行われた内国証券は、必ず、「募集」か「私募」で、発行されているからです。

「募集」で発行された有価証券は、原則として、有価証券届出書が提出されています。開示が行われているわけです。そして、開示が行われた有価証券については、原則として、目論見書の作成が必要ありません。

つまり、募集で発行された有価証券の売付け勧誘等は、すべて売出しとしても、実務上、何の支障もないわけです。言い換えれば、募集で発行された有価証券の売付けが、私売出しとなることはないということです。

一方、「私募」で発行された有価証券も、私売出しとなることはありません。なぜなら、私募で発行されている有価証券には、必ず、「転売制限」が付いていますから、私募で発行された有価証券の発行以降の取引は、発行時に付された転売制限にしたがって取引されるからです。

結局、私売出しの対象となる有価証券は、発行時に、国内で取得勧誘が行われなかった外国証券に限られるわけです。

<私売出しの定義>
外国証券を不特定多数に売付けようとする行為は、当然、売出しです。以上から、外国証券の取引のうち、売出しに該当しない売付け勧誘等のことを、便宜上、私売出しと呼んでいるのです。

「不特定かつ多数」の対義語は「特定又は少数」ですから、私売出しとは、外国証券を特定の投資家、具体的には、適格機関投資家(及び特定投資家)に売付けようとする行為か、外国証券を少人数の投資家、具体的には、(第一項有価証券の場合)50名未満の投資家に売付けようとする行為のいずれかになります。

繰り返しますが、私売出しとは、単なる「売り」に過ぎません。ところが、外国証券の場合、募集も私募も行われていないために、開示もされず、転売制限も付されずに売られる可能性があります。そこで、開示をするなら「売出し」とし、転売制限を付すなら「私売出し」と呼ぶことにしたのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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