有価証券の引受け(1)


有価証券の引受け、募集、売出しについては、既に解説していますが、引受けや募集や売出しは、金融商品取引業となるときとならないときがあります。金融商品取引業になるときには、当然、金融商品取引業者として内閣総理大臣の登録を受けていないとできません。引受け、募集、売出しが、どのような場面で金融商品取引業になるかをみていきましょう。

<有価証券の引受け>
有価証券の引受けは、まず例外なく、金融商品取引業です。有価証券の引受けの意味を忘れてしまった方は<有価証券の引受け>をご覧ください。有価証券の引受けは、第一種金融商品取引業です。有価証券の引受けが問題になるのは、不動産信託受益権の取引や組合契約の出資持分の取引のときです。

<不動産信託受益権の引受け>
ここから、少し話がこんがらがってくるかもしれませんが、有価証券の引受けを理解する上では避けて通れないところですので、頑張ってついてきてくださいね。

オリジネーター(A)が不動産信託受益権を譲受人(C)に譲渡するとき、AがCに直接譲渡するのではなく、別の者(B)がAからいったん不動産信託受益権を譲り受けて、BがCに不動産信託受益権を譲渡する場合、BがAからいったん不動産信託受益権を譲り受ける行為が、有価証券の引受けです。

問題なのは、A・B・Cの間で取り扱われた有価証券は、不動産信託受益権ですので、第二種金融商品取引業の登録を受けていればできそうですが、有価証券の引受けは第一種金融商品取引業です。したがって、Bは、第二種金融商品取引業の登録を受けているだけではダメで、第一種金融商品取引業の登録が必要であるという点です。

実務的にはどういうことが起きるかをみてみましょう。

「土地」の所有者である宅建業者(A)が、最終的な所有者となる譲受人(C)に土地を譲渡しようとするとき、AとCの間に別の宅建業者(B)が入り、BがAからいったん土地を譲り受けて、BがCに土地を譲渡することは珍しいことではありませんし、何の問題もありません。

ところが、この「土地」が「不動産信託受益権」になると話は一変します。

「不動産信託受益権」の所有者である宅建業者(A)が、最終的な所有者となる譲受人(C)に不動産信託受益権を譲渡しようとするとき、AとCの間に別の宅建業者(B)が入り、BがAからいったん不動産信託受益権を譲り受けて、BがCに不動産信託受益権を譲渡すると、実質的には「土地」のときと何ら変わらないにもかかわらず、BがAからいったん不動産信託受益権を譲り受ける行為は「有価証券の引受け」となり、Bは第一種金融商品取引業の登録を受けていないと金融商品取引法違反、3年以下の懲役になってしまいます。

不動産信託受益権の取引はすべてが第二種金融商品取引業でできるわけではありませんので、第二種金融商品取引業の登録をしている金融商品取引業者の方は、要注意です。

なお、有価証券の引受けのうち、金融商品取引業から除かれる有価証券の引受けとして、「信託会社が信託の受益権の私募に際し行う引受け行為」がありますが、これは、受託者である信託会社が信託の受益権を譲渡した場合について規定したものですので、例に挙げたA・B・Cの事案のように、オリジネーターが不動産信託受益権を譲渡する場合とは異なります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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