適格機関投資家等特例業務の要件


金融商品取引法で、金融商品取引業者の登録をしなくても、金融商品取引業を営める方法がいくつかあります。適格機関投資家等特例業務もその一つです。

一般的に、業務執行組合員が組合に対する出資持分を取得させる行為は、第二種金融商品取引業であり、金融商品取引業者として登録を受けなければ、行うことができません。

これに対し、組合契約の締結であっても、1名以上の適格機関投資家が出資を行い、その他の出資者の数が49名以下の場合、業務執行組合員が出資持分を取得させる行為は、適格機関投資家等特例業務として、登録を受けることなく、財務局(長)に届出をするのみで行うことができます。

問題は、適格機関投資家の範囲です。

適格機関投資家は、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(「定義府令」と通常呼ばれます)10条1項に明文をもって規定されていますので、一見すると、適格機関投資家の範囲が問題になることはないように見えます。

例えば、金融商品取引業者として登録を受けている証券会社は、間違いなく、適格機関投資家です。問題となるのは、投資事業有限責任組合です。

投資事業有限責任組合も、定義府令に適格機関投資家と規定されています。したがって、問題が生じる余地がないようですが、果たして、金融商品取引業者としての登録を受けていない投資事業有限責任組合は、適格機関投資家なのかが問題の所在です。

投資事業有限責任組合に関する法律3条1項本文に、投資事業有限責任組合契約は、各当事者が出資を行い、共同で事業を営む契約であると規定されています。

一般に、投資事業有限組合契約の成立過程で、無限責任組合員が有限責任組合員に出資の勧誘を行うと、それは、組合契約への出資持分の取得の勧誘ですから、第二種金融商品取引業となり、金融商品取引業の登録を受けなければなりません。したがって、投資事業有限責任組合は、金融商品取引業者でなければならないのではないかという疑問が生じます。

ただし、金商法2条2項5号イにより、出資者の全員が事業に関与する組合の場合、その出資持分は有価証券ではありませんから、出資持分の取得勧誘をしても金融商品取引業に該当することはありません。

ここで「事業に関与する」といえるためには、出資者のすべてが出資対象事業に常時従事することが要求されます。

以上から、無限責任組合員(あるいは事業者)のみが事業に常時従事する投資事業有限責任組合は、金融商品取引業者として登録を受けていなければならないという結論になります。

このことは、金融商品取引業者として登録を受けていなければ、投資事業有限責任組合とはいえないというわけではありません。

ただ、聞いた話ですが、適格機関投資家等特例業務を脱法行為的に利用されないように、1名以上の適格機関投資家として投資事業有限責任組合をカウントする届出者については、財務局が、適格機関投資家等特例業務の届出を受理するに当たり、投資事業有限責任組合が金融商品取引業者として登録を受けているかどうかを確認しているということです。

複数の特例業務届出者が、証券取引等監視委員会によって、適格機関投資家等特例業務の要件を満たしていないと認められて、裁判所による業務差止命令を受けています。特例業務届出者が、適格機関投資家等特例業務の要件を満たしているかどうかの審査の目は、厳しくなっています。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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