顧客向け資料の審査体制


証券会社のコンプライアンスを維持するためにとても大切なプロセスに、顧客に提供される資料のチェックプロセスがあります。

多くの証券会社には、顧客に提供する資料のチェックプロセスがあります。顧客に提供する資料は、重要な営業ツールですので、そこに誤りや顧客を誤解させるような表現がされていると、顧客に迷惑がかかったり、場合によっては、法令違反となったりするからです。

チェックプロセスは、会社のよって異なります。

証券会社に最低限要求されるチェックプロセスは、特定投資家以外の投資家、いわゆる一般投資家に提供される広告が社内で任命されている広告審査担当者によって、法令違反がないかどうかチェックするものです。これは、証券会社が所属する日本証券業協会の規則によって義務付けられています。

実務的には、協会規則よりも厳しいチェックプロセス、審査手続きが必要です。

まず、審査手続きの対象となる資料は、広告に限られるべきではありません。広告、つまり、勧誘資料でなくても、例えば、顧客サービスの一環として提供される情報提供資料も、審査対象とすべきです。情報提供の表現や方法によっては、顧客を誤解させることがあったり、断定的な判断が含まれていた結果、法令違反となったりすることがあるからです。

次に、特定投資家に提供される資料も社内審査されるべきです。確かに、金商法の広告規制は、一般投資家に提供される広告等に限定されています。また、既述の通り、日本証券業協会の規則も、特定投資家に提供される広告等の審査を要求していません。

けれど、法令で禁止されている断定的判断の提供や虚偽又は誤解を生ぜしめる表示の相手方には、特定投資家も含まれます。資料の作成者は、顧客を誤解させる表現を使っていないつもりでも、客観的に見れば、誤解されてもおかしくない表現が使用されているかもしれません。ですから、特定投資家に提供される資料であっても、第三者の目で審査される必要があります。

審査担当者を誰にするかも重要です。

適任なのは内部管理責任者やコンプライアンス部門の担当者です。内部管理責任者もコンプライアンス部門の担当者も、金商法に関する知識があるからです。また、資料の作成者が所属する部門のヘッドの審査も必要です。資料に専門的な書かれている場合、書かれていることが正しいかどうかについて、内部管理責任者やコンプライアンス部門の担当者は、必ずしも明るくない場合があるからです。

したがって、資料の審査については、まず、作成者の所属する部門のヘッドが専門家としての立場から審査を行い、問題ないと判断された資料が、内部管理責任者やコンプライアンス部門の担当者に送られ、審査されるという手続きが理想ということになります。

「そこまでやるか」
「理想と現実は違う」

こういう意見も出てきそうですが、顧客に提供する資料が、顧客を誤解させたり、法令違反となったりしたら、顧客に迷惑がかかります。また、法令違反となったら行政処分の対象になります。ですから、コンプライアンスの観点からは、そこまでやる体制つくりが必要です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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