オリンパス事件の問題の本質


オリンパスの株価が乱高下しています。上場の廃止か維持かが問題となっていると報道されていますが、実態は、ばくちの対象になっているに過ぎません。短期間で利益を上げようとする行為を「日計り」といいますが、日計りの個人投資家がばくちに出ているわけです。

<有価証券報告書の意義>
オリンパスの問題は、金融商品取引法違反という形で問われています。上場企業は、例外なく、毎年1回(正確には毎事業年度に1度)、「有価証券報告書」をEDINETを通じて財務局に提出する義務があります。

有価証券報告書とは、企業の経営成績や財務状況を記載した書面です。形式は金融商品取引法関連法令で定型化されていて、具体的には、損益計算書や貸借対照表を、説明を加えて、記載するというのが基本的な考え方です。

なぜ、有価証券報告書が必要かといえば、投資家に企業が発行する株式に投資するか売却するかの判断材料を提供するためというのが多くの教科書で示されている回答ですが、実態に即して言えば、企業が発行する株式に、企業情報を反映させることによって、適正な株価形成を実現するためです。

<問題の所在>
オリンパス事件のあらましを報道に基づいて簡単に説明すると、90年代の株価の下落で被った損失を、実態のない会社に移しかえて、オリンパス自身の経営成績や財務状況を、実態よりも、よく見せていたというものです。

問題の所在として、報道では問題の所在を飛ばしにあるとしていますが、損失先送りの間違いです。オリンパスの経営者が「損失を今表面化させる必要はない」という考え方が問題です。

飛ばしの例として山一證券があげられていますが、オリンパスのケースも山一證券のケースも、飛ばしが問題なのではなく、90年代前半、「相場はいつか回復するから損失は早晩なくなる」と信じて損失を「先送り」にしたと当時の経営陣の姿勢が事件の本質です。

<責任は誰にあるのか>
問題の本質は、当時の経営陣の姿勢にあるわけですが、表面化している法令違反は、虚偽の有価証券報告書の提出があったのではないかという点です。損失先送りを開始したときは、保有する有価証券の評価は取得価格(簿価)で計上して良いとされていたわけですから、当時の経営陣を責めることはできません。

虚偽の有価証券報告書の提出があったとすれば、有価証券報告書を監査した監査法人や公認会計士に責任があったことになります。

有価証券報告書は、公認会計士等の監査を受け、承認をもらうことが求められていますが、それは、不正な会計を暴くことが目的ではなく、適切な会計処理がされているか、言い換えれば、企業が、投資家に与えられるべき情報を適正に提供しているかを、第三者の立場から確認するためにあるものです。

このブログで何度も繰り返し言い続けていますが、金融商品取引法(当時は証券取引法)の究極的な目的は、有価証券の公正な価格形成です。公正な価格とは、発行企業に関する情報がすべて反映された価格という意味です。

公認会計士が有価証券報告書を監査する意味は、企業が発行する株式の価格に、発行企業の情報が適正に反映されていることを担保することにあります。公認会計士が企業の情報を見落としてしまった、あるいは、見逃してしまったとすれば、公認会計士の監査の意味がありません。

もし、オリンパスの有価証券報告書の虚偽記載が問題であったと認められるのであれば、責任は経営陣ではなく、当時の監査を行った監査法人なり公認会計士なりに求められるべきです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード