焦る必要はないオリンパスの株主

「オリンパスの株券が上場廃止になると投資家に多大な損害が生じる」という報道を見ました。が、このような報道は正確ではありません。

<株主は今何をすべきか>
最初に、現在オリンパスの株券を保有している株主の方に言いたいのは、安値なら、売らずに黙って保有していれば、仮に損が生じても、損害賠償請求ができる可能性があるということです。

<裁判をしなくても損害賠償請求ができる>
金融商品取引法21条の2は、ウソや誤解を生む報告(正確にいうと「有価証券報告書」などの書類を指します)がされている間に株券を買った株主が損をした場合、会社(オリンパス)が損失を賠償する義務があるとしています。

また、金融商品取引法は、ウソであったことが公表された公表日より前1年以内にオリンパスの株券を購入した人で、かつ、公表日にも株券を保有していた株主に限って、特別な損害賠償請求の機会を与えています。このルールの適用のポイントは売ってしまっていてはダメだということです。

なお、損害賠償の請求は、一般に、裁判をする必要はありませんので(自動車事故の場合を考えてみてください)、損害賠償請求のハードルは、決して高くありません。

<とりっぱぐれる心配は少ない>
さらに、オリンパスが公募増資をしているかどうかしりませんが、オリンパスがウソや誤解を生む有価証券届出書(増資のときなどに公表した会社の情報などが記載された書類です)を提出していた場合、株主は、オリンパスだけでなく、オリンパスの取締役、監査役、執行役、それに、オリンパスの監査をした公認会計士や監査法人に対しても、損害賠償請求ができます。要するに、関係者全員に損害賠償請求ができるので「とりっぱぐれる心リスクは低い」ということです。

<焦る必要なし>
いずれの場合も、賠償額には一定の限度があったり、時効が成立する場合があったり、損害賠償請求の相手方となる者に一定の制限があったりと、金融商品取引法には細かい規定がありますので、必ず、専門家に相談して、損得を計算する必要があります。が、監理ポストに移されたからといって、あるいは、上場廃止になったからといって、オリンパスの株券を保有している株主は、金融商品取引法を知っていれば、必ずしも、焦る必要はないのです。

株主の方は、金融商品取引法が、投資家保護の法律である側面もあることをお忘れなく。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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