不動産信託受益権


第二項有価証券の信託の受益権のうち、圧倒的に取引高が多いのは「不動産信託受益権」です。最初に、不動産信託受益権の変遷を確認しておきましょう。

<土地信託>
不動産信託は、もともと、土地信託など、不動産の所有者が不動産の運用を信託会社に委託する形で使われていたものです。更地の所有者が信託銀行に土地を信託譲渡し、信託銀行が建設会社にテナントビルや賃貸マンションの建設を委託して、建物の完成後は、信託銀行が不動産管理会社にテナントの管理を委託、純利益から一部を信託報酬として受領して、残りを土地を信託譲渡した者に配当するという仕組みです。

<一棟売り>
不動産の証券化のはしりとしては、信託銀行が更地を探してきて、宅建業者に融資をして土地を購入させ、宅建業者に土地を信託譲渡させて、賃貸マンションを建設後、信託を解約、土地・建物を資産家に売却して、購入代金を融資することによって、資産家の節税対策に役立てるというものもありました。

<信託受益権の小口化>
さらに進むと、信託銀行が、都心のテナントビルを所有者に信託譲渡させて、信託受益権を1口1億円で販売し、信託受益権の購入者に購入資金を融資して、購入者の節税対策に利用するという形態がとられるようになり、現在の不動産の証券化に近づいていきました。

ただ、この頃は、信託受益権の購入者は、賃貸収入(インカムゲインといいます)よりも、不動産の値上がり益(キャピタルゲインといいます)が目当てで、値上がりすると売却して、融資を返済するか、さらに借入を増やして別の信託受益権を購入していました。サブプライムローンに似た構造です。このため、いわゆるバブル崩壊後、この形は市場から姿を消すことになります。

<キャピタルゲインからインカムゲインへ>
以上は、すべて不動産信託ですが、不動産の運用収益をもとに不動産を評価するDCF法が採用される前の時代で、したがって、不動産の収益といえば、値上がり益(キャピタルゲイン)を狙うもので、賃料(インカムゲイン)を得るという発想がまったくといってよいほどありませんでした。

今でこそ不動産の値下がりは当たり前ですが、20年以上前、私が信託銀行で不動産信託を取り扱っていたときは、土地は絶対的に足りないのだから、下がるはずがないという前提で不動産信託は設計されていました。

テナントビルや賃貸マンションに限らず、ホテルやショッピングセンターなど、不動産は活用されていれば、そこに収益があるという発想で不動産信託受益権が登場したのは、土地の価格が下落した後のことです。

<金融商品取引法の規制>
複数の投資家から出資を集め、不動産を運用し、収益を出資者に分配するという仕組みを規定した「不動産特定共同事業法」が成立したのは平成6年、今では当然のように使われている特定目的会社(TMK)を規定する「資産流動化法」の原型ができたのは平成10年、信託受益権販売業の制度が「信託業法」に導入されたのは平成16年です。

そして、平成19年9月30日、証券取引法が金融商品取引法に改正され、不動産信託受益権や不動産信託受益権に出資して収益の分配を受ける権利が、第二項有価証券として金融商品取引法の規制を全面的に受けることになりました。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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