個人投資家の取引上の注意点


証券取引等監視委員会の事務局総務課長が、「相場操縦」について、東京証券取引所メールマガジンで連載しています。

第1回目は、相場操縦の定義、つまり、何をすると相場操縦になるのかについて書いています。相場操縦は「犯罪」で、違反者は10年以下の懲役です。もっとも、実際には、課徴金制度といって、違反者に、課徴金を支払わせるのみで、裁判にならないことがほとんどです。

相場操縦の典型的な事例は、上場株式の売買で起こりますので、以下は、上場株式の相場操縦について、説明することにします。

相場操縦とは何かについては、東証メルマガに簡潔にまとめられていますので、抜粋します。

「すなわち、相場操縦の罪のうち、第一項は、取引が繁盛に行われている等の誤解を与えることを目的とした、仮装、馴れ合い売買を禁止している。第二項は、繁盛であると誤解させ、又は相場を変動させるべき売買等を、有価証券売買等を誘引する目的をもって行うこと等を禁止している」

<仮装売買・馴合売買>
第一項といっているのは、金融商品取引法159条1項のことです。取引が繁盛に行われているとの誤解を与えることを目的として、仮装売買や馴合売買をすることだとあります。つまり、実際には違うのに、いかにも取引が盛んに行われている人気銘柄だという誤解を一般の投資家に与えることを目的として、仮装売買や馴合売買をすることが、相場操縦の一つだということです。

仮装売買とは、基本的に一人で株式の売りと買いを行うことです。大量に買って売ったり、何度も繰り返して買って売ったりする行為が、仮装売買にあたります。

馴合売買とは、2人以上で株式の売りと買いを行うことです。馴合いというくらいですから、計画的に、一方が買って、一方が売るような取引が馴合売買です。

「私は、毎日、株式を売ったり買ったりしているが大丈夫か」と心配される方もいらっしゃると思いますが、「誤解を生じさせようとする目的」がなければ大丈夫です。

言い換えると、他の投資家に取引が活発だと誤解させる意図で、株式を売ったり買ったりすると、株価が上がろうが下がろうが、それだけでアウトです。最近では、少ない資金で株式を売買している個人投資家の取引が仮装売買にあたるとして、課徴金の対象になっているケースが目立ちます。

板が薄い、つまり、取引量が少ない株式の売買を繰り返し行うと、板が厚い、つまり、取引が活発に行われていると、他の投資家を誤解させる目的があったとみなされる可能性が非常に高いので、個人投資家の方は、板が薄い株式を売買するときには、要注意です。

<誘引目的売買>
第二項といっているのは、金融商品取引法159条2項のことです。他の投資家の取引を誘引して、つまり、他の投資家にも参戦させる意図で、株式を売買する行為は、誘引目的売買として、処分されます。

いまどきいるかどうか知りませんが、「仕手戦」といわれる仕手筋による売買は、第一項違反である場合もあれば、第二項違反の場合もあります。

個人投資家が注意しなければならないのは、「見せ玉」です。

売買を成立させる意図がなく、取引が成立しないと思われる価格で指値注文をいれ、相場が動いたら、注文を取消すという一連の行為を「見せ玉」といいます。

見せ玉は、誘引目的売買、つまり、相場操縦の一つですから、個人投資家の方も、注意が必要です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
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