アセット・ファイナンス7


債権譲渡
A社が、B社に対する貸付金、つまり、債権を、今、現金化する方法はいくつかあります。最も単純な方法は、債権を一括譲渡してしまうことです。債務者対抗要件、第三者対抗要件を備えるために、A社は、確定日付のある譲渡通知をB社にしなければなりませんが、この手間は、アセット・ファイナンスにおいては、多かれ少なかれ、発生します。

なお、債務者対抗要件とか、第三者対抗要件とか、確定日付とか、譲渡通知の話は、民法の話ですので、このブログでは省略します。ネットで検索すればすぐに見つかると思います。また、債権譲渡特例法という法律も、実務では重要になってきますが、このブログは、金融商品取引法のブログですから、必要なときに、必要なところだけ、説明します。

債権譲渡がアセット・ファイナンスか、というと、このブログでは、コーポレート・ファイナンスではないお金の集め方、資産を活用したファイナンスをすべてアセット・ファイナンスと呼ぶことにしていますので、債権を一括譲渡してしまう方法も、アセット・ファイナンスです。

<割引現在価値>
「いくらで売れるの?」

経済的には、最も重要な点ですが、法律的にはいくらで売れるかは問題ではありません。簡単に説明しておくと、「割引現在価値」という考え方が重要になってきます。割引現在価値は、資産を評価する基本的な計算方法です。

B社はA社に、3年後に10億円を返す、半年毎に年利2%の利息を支払う、という約束でしたね。

現在から見ると、半年後に1千万円、1年後に1千万円、1年半後に1千万円、2年後に1千万円、2年半後に1千万円、3年後に10億1千万円の現金が入ってくることになります。現金の出入りを「キャッシュフロー」といいます。A社のB社に対する債権は、それぞれの時期にそれぞれの金額のキャッシュフローを生じることになります。

話を身近にするために、簡単な質問に変えます。

銀行預金の金利が年率2%であったとき、現在の100万円と1年後の100万円の価値は、同じでしょうか、違うでしょうか。違うとすると、どちらの方が、価値があるでしょうか。

現在の100万円を年率2%で運用できるのであれば、1年後には102万円になります。逆にいえば、1年後の102万円の現在の価値は、100万円だということです。

同じように考えると、1年後の100万円は、現在の価値に直すと約98万円です。これを、割引現在価値といいます。つまり、現在の100万円の方が、1年後の100万円よりも約2万円価値が高いということです。

これと同じ作業を、A社のB社に対する債権のキャッシュフローについて計算すれば、債権の現在価値が計算できます。

余談ですが、「金利が上がると債券の価値は下がる」と新聞で説明されていることがありますが、原因は、このためです。

この「割引現在価値」の考え方は、アセット・ファイナンスの実務では、経済的に、非常に重要になってきますので、だいたいこんなものなんだ、というくらいに記憶しておくと役に立ちます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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