アセット・ファイナンス8


A社は、B社に対する債権を売却してしまうという方法が、最も単純な現金化の方法です。これができるなら、この方法でも良いでしょう。

ただ、現実問題としては、債務者であるB社にとって、債権者が誰であるかは重要な問題です。民法の上では、債務者の承諾がなくても、債権者が債務者に「誰々に譲渡したよ」と通知をすれば、債権者は勝手に譲渡することができることになっていますが、勝手に譲渡すると、A社とB社の関係は、悪化するかもしれません。

A社が債権を譲渡する相手方である譲受人が、B社も信頼をおいている銀行であれば、B社も納得してくれるかもしれません。A社が、B社も懇意にしているC銀行に、B社に対する金銭債権を譲渡したとしましょう。これは結局、どういう結果になるでしょうか。そうです。C銀行が、B社にお金を貸しているのと同じ結果になります。

ところが、C銀行は、すでにB社に対して一杯一杯お金を貸していて、もうB社にお金を貸すことができない状態だった場合には、どうすれば良いでしょうか。

<信託受益権化>
他にも方法がありますが、話を単純化するために、D信託銀行に債権を譲渡する方法を考えてみましょうB社も、D信託銀行なら債権者として安心だと考えているとします。

信託
A社は、まず、D信託銀行にB社に対する金銭債権を信託します。信託とは、所有権を移転する行為です。B社に対する金銭債権に関していえば、債権者がA社からD信託銀行に移るということです。通常の譲渡と同じです。

民法は、債権譲渡の対抗要件は、債権者から債務者に対する通知か、債務者の承諾であると規定しています。

民法の細かい説明はしませんが、対抗要件とは、「主張できるための要件」という意味です。A社がD信託銀行に債権を譲渡したことをB社に通知するか、B社の承諾があれば、D信託銀行は「自分が債権者だ」とB社に主張できるという意味です。

さらに、民法は、債権譲渡の第三者対抗要件は、通知や承諾を確定日付のある証書でしなければならないと規定しています。第三者対抗要件とは、当事者以外の者に「自分が債権者だ」と主張するための要件のことです。

どうして第三者対抗要件が必要かというと、金融商品取引法とは関係がないので、詳しい話はしませんが、例えば、A社がD信託銀行に債権を譲渡したにもかかわらず、E信託銀行にも譲渡するという「二重譲渡」の危険があるからです。D信託銀行としてはE信託銀行に「自分が債権者だ」と主張されると大変ですから、仮に、A社がE信託銀行に二重譲渡しても「いやいや、自分が債権者だ」と第三者であるE信託銀行に主張できる要件を備えておく必要があるのです。

話を元に戻し、A社がD信託銀行にB社に対する債権を信託しました。対抗要件は、もちろん、備えました。単なる譲渡と異なるのは、A社は、D信託銀行から「受益権」を取得するという点です。そして、A社は、受益権を第三者に譲渡することができるという点です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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