有価証券の引受け(2)


有価証券の引受けは、まず例外なく、金融商品取引業であるということは前回説明したとおりですが、例外が3つだけあります。1つは、前回説明した受託者による私募に関連する引受け行為です。

<航空機リース>
航空機や船舶などのリース事業では、リース会社が匿名組合契約の営業者となる会社を作り、いきなり、出資者である匿名組合員と営業者が匿名組合契約を締結するのではなく、いったん、リース会社が出資者となる匿名組合契約を営業者と締結し、その後、リース会社が匿名組合契約の出資持分を最終投資家に譲渡するという契約を結ぶのが実務であるというリース会社の指摘がありました。

このとき、リース会社は、第二項有価証券である匿名組合契約の出資持分をいったん取得してから最終投資家に取得させることになるので、リース会社が出資持分を取得する行為は、有価証券の引受けになります。

この場合、リース会社は第二種金融商品取引業のみならず、第一種金融商品取引業の登録が必要になります。引受けという金融商品取引業は、例外なく、第一種金融商品取引業だからです。

金融庁は、リース会社の以上の指摘を受けて、第二種金融商品取引業の登録を受けたリース会社が100%出資する会社が営業者となる匿名組合契約のうち、営業者が機械をリースする事業を行う契約の場合、リース会社がいったん出資持分を取得する行為を金融商品取引業から除外するとしました。引受けであっても、金融商品取引業から除外されたため、リース会社の引受け行為は、第一種金融商品取引業の登録を受けなくても可能になっています。

<引受けの意味>
ところで、引受けの意味は、金融商品取引法の中でもかなりむずかしいものですので、わからなくなったり、あいまいに感じたりしたときには、いつでも<有価証券の引受け>に戻ってみてください。

<二層構造ファンド>
不動産の証券化では、親SPCが子SPCの出資持分を取得するにあたり、ファンドを組成する会社が、最終的に子SPCとなるSPCに対する出資持分をいったん取得してから、親SPCが組成された時点で、親SPCに取得した出資持分を譲渡するという実務があるという不動産関係会社からの指摘がありました。

最終的に子SPCとなるSPCを営業者とする匿名組合契約に対する出資持分は、第二項有価証券ですから、出資持分をいったん取得して、親SPCに譲渡する場合、出資持分を取得する行為は、有価証券の引受けになります。この場合、ファンド組成会社は、第二種金融商品取引業のみならず、第一種金融商品取引業の登録を受けなければなりません。引受けという金融商品取引業は、例外なく、第一種金融商品取引業だからですね。

金融庁は、この指摘を受けて、第二種金融商品取引業の登録をした法人が、子ファンドである匿名組合契約の出資持分をいったん取得して、親ファンドに譲渡する場合、子ファンドの出資持分をいったん取得する行為を金融商品取引業から除外するとしました。引受けであっても、金融商品取引業から除外されたため、子ファンドの出資持分を取得する行為は、親ファンドに譲渡する限り、第一種金融商品取引業の登録を受けなくても可能になっています。

<第二項有価証券の引受け>
以上の除外規定を設けたことからも明らかなように、第二項有価証券であっても、他人に取得させるためにいったん取得する行為は、第二種金融商品取引業ではなく、第一種金融商品取引業です。第二種金融商品取引業の登録しか受けていない会社は、間違っても、別の者に取得させる前に、不動産信託受益権や匿名組合の出資持分などの第二項有価証券を取得しないように注意しなければなりません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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