アセット・ファイナンス9


受益権
受益権とは何か。

信託の受益権は、金融商品取引法の有価証券です。「二項有価証券」と呼ばれる有価証券です。

受益権とは、信託財産から上がる収益を受け取ることができる権利のことです。A社がD信託銀行にB社に対する金銭債権を信託した場合にA社がD信託銀行から取得する受益権は、B社からD信託銀行に支払われる利息や元本を受け取ることができる権利のことです。

「それじゃあ、信託してもしなくても、同じことじゃないか」

D信託銀行に支払う手数料を考えなければ、A社はB社に対する金銭債権を所有していても、D信託銀行に信託しても、経済的には同じことです。

決定的に異なる点は、A社は、受益権をB社への通知やB社の承諾なしに、譲渡することができるという点です。

A社が、金銭債権をダイレクトに譲渡するときには、B社に通知するか、B社の承諾を得なければならなかったですよね。いったん、信託銀行を入れると、ダイレクトに譲渡した相手はD信託銀行ですから、D信託銀行に譲渡したことについては、B社に通知するか、B社の承諾を得なければなりませんが、受益権を譲渡する際には、B社に無言で譲渡してしまえばいいのです。

実務では、A社が、例えば、F社に受益権を譲渡する場合、D信託銀行は「信託受益権譲渡承諾書」を交付します。なぜか。

信託受益権とは、受益権のことです。受益権は、D信託銀行から、信託財産であるB社に対する金銭債権から上がる収益を受け取る権利です。

信託財産とは、信託して運用している財産のことで、事例では、B社に対する金銭債権です。受益権を所有している者を「受益者」といいますが、受益者は信託銀行に「収益を配当せよ」といえるのですから、受益者にとって信託銀行は債務者、同じ意味ですが、信託銀行にとって受益者は債権者です。

債権者が、債権を譲渡するときには、債務者に通知するか、債務者の承諾を得なければなりませんでした。だから、A社はF社に受益権を譲渡するとき、D信託銀行に通知するか、D信託銀行の承諾を得なければなりませんが、実務では、D信託銀行が「信託受益権譲渡承諾書」という書面を交付する方法を採用しているのです。

ここまで、大丈夫でしょうか。初めて読む方にとっては、かなり、複雑に見えると思います。でも、単語の意味と原理原則を抑えてしまえば、簡単な話です。

次回、単語の意味と原理原則を再確認しましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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