アセット・ファイナンス12


今週は、ものすごいスピードで説明してきましたが、大丈夫でしたでしょうか。

今日は、金曜日ですので今までの話を整理します。

<金銭債権を現金化したい>
A社は、3年後にB社から返済される金銭債権を、今、現金化したいというニーズがありました。金銭債権という資産を活用してお金をあつめようというわけです。このようなお金の集め方は、A社の信用力とは何の関係もありません。

資産を活用する、A社の信用力とは関係がない、だから、A社のこのようなお金の集め方は、「アセット・ファイナンス」です。

<金銭債権を信託銀行に信託する>
A社が所有している金銭債権をF社が買いたいといっています。F社が買ってしまうと、B社の債権者はF社になってしまいます。B社は「F社からお金を借りるのはいやだ」と言っています。

困ったA社。せっかく、F社に買ってもらって、今すぐ金銭債権を現金にして、運転資金に充てることができるのに、B社がいやだというものをムリに売却すると、B社との関係が悪化しそうです。

聞いてみると、B社は「銀行が債権者になるんならいいよ。信託銀行でもOK」と言っています。それを聞いたA社は、金銭債権をD信託銀行に信託しました。これで、債権者はD信託銀行で決定です。

A社は、信託の際に、D信託銀行から信託受益兼を取得しました。A社は、委託者兼当初受益者だということです。

<A社がF社に信託受益権を譲渡>
A社は、信託受益兼をF社に譲渡しました。

A社からF社に信託受益権が移転しても、A社からF社に移転したのは信託受益権で金銭債権ではありませんから、D信託銀行がB社の債権者であることには、何ら影響しません。

これで、A社はお金を集められたし、B社は信託銀行が債権者だし、F社はB社の金銭債権を譲り受けたのと同じ経済効果を受けることができたしで、A社もB社もF社ハッピーでした、というのが、全体像です。

<金融商品取引法の適用>
信託受益権は、金融商品取引法の金銭債権ですから、金融商品取引法の適用を受けます。金融商品取引法の適用を受けるのは、有価証券の発行者が、有価証券を販売しようとするときからです。金融商品取引法の言葉では、発行者の行為は「販売」ではなく「取得勧誘」といいます。

今回の事例では誰が発行者か。

これは決め事。金融商品取引法は、「委託者が当初受益者のときには、委託者が信託受益権を販売したときに、発行したことにする」と決めています。したがって、今回の事例では、A社が委託者兼当初受益者ですから、A社が発行者です。

だから、A社が信託受益権をF社に販売したときから、金融商品取引法が適用されるのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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