アセット・ファイナンス14


<リース債権信託>
XをA社が購入するのか、B社が購入するのかという現実問題があるのですが、アセット・ファイナンスの本質ではありませんので、Xという設備に詳しいB社が購入するケースを考えてみましょう。

まず、B社は借金をしてXを購入し、同時にXをA社に売却して、借金を返済します。さらに同時に、B社とA社はリース契約(賃貸借契約)を結びます。A社はB社にXをリース(賃貸)し、B社はA社に毎月リース料を支払うという契約です。

この結果、A社には「リース債権」が発生することになります。リース債権は、キャッシュ・フローを生み出しますよね。ということは、アセット・ファイナンスの対象になるということです。

A社はリース債権を、今、現金化したい、お金に換えたいというニーズがあったとします。この場合、方法はいろいろですが、リース債権を信託銀行に信託するという方法があります。

なお、このとき、対抗要件の問題が生じます。結論だけお話しすると、A社は信託銀行にリース債権を譲渡したときには、B社に内容証明つきの証書でリース債権を譲渡したことを通知します。

A社はリース債権の所有者です。信託する資産の所有者のことを「委託者」といいます。信託とは財産を委託することだからです。信託を受ける信託銀行は「受託者」と呼ばれます。また、信託する財産のことを「信託財産」といいます。

委託者であるA社が受託者である信託銀行に信託財産としてB社に対するリース債権を信託すると、A社は信託銀行から信託受益権を取得します。金銭債権の信託でお話したことと同じです。このとき、A社は、信託受益権の最初の所有者になります。

受益権とは、既に説明していますように、受託者に対する請求権、つまり、債権のことです。契約書上で内容が決まってはいますが、権利ですから目には見えません。

最初に信託受益権を所有することになる者のことを「当初受益者」といいます。ですから、A社は、「委託者兼当初受益者」と呼ばれます。

A社が、信託受益権を投資家に売却すれば、A社は、リース債権という資産を現金化できることになります。

<自益信託と他益信託>
信託を使った現金化(証券化)スキームの話をしているときに、「信託銀行が発行する信託受益権を当社が買って販売する」という金融商品取引業者の方がいますが、委託者でない限り、信託受益権は信託銀行から買うものではありません。委託者兼当初受益者から買うものです。(なお、金融商品取引法では「買う」といわず、「取得」といいます)

今までの事例では、委託者が当初受益者です。請求権の最初の所有者は委託者だということです。請求権が自分にある、自分の利益のために信託ですので、このような信託を「自益信託」と呼びます。

一方で、委託者が金銭などを信託財産として信託銀行に信託し、信託銀行による運用益は別の者が請求できるという信託もあります。委託者からみると、他人の利益のための信託ですので、「他益信託」といいます。

企業である事業主が、従業員と合意した年金規約に基づいて実施する規約型企業年金は、他益信託です。

金融商品取引業の実務では、信託といえば、自益信託のことです。ですから、このブログで信託といえば、いつも、自益信託のことです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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