アセット・ファイナンス16


<匿名組合の場合>
前回の例で、リースされた機器が航空機であれば航空機ファイナンスと呼ばれるアセット・ファイナンスに、船舶であれば船舶ファイナンスと呼ばれるアセット・ファイナンスになります。

これまで信託を利用したアセット・ファイナンスの話をしてきましたが、匿名組合契約を利用したアセット・ファイナンスも、数多く見受けられます。

航空機ファイナンスの匿名組合出資持分は、今でもあるのかどうか知りませんが、税金繰り延べ商品としての性格をもつ商品です。レバレッジド・リースとして知られています。

前回の例でいうと、A社は航空機のリース会社、B社は航空会社で、Xが航空機です。A社は、子会社としてSPC(Special Purpose Company、特別目的会社)を設立します。そして、SPCが営業者となり、A社と匿名組合契約を結びます。

A社は、次に、匿名組合契約で取得したSPCに対する出資持分を投資家に譲渡します。投資家は、航空機の価格を100とすると、例えば、30だけ出資します。残り70は、SPCが銀行からお金を借りるのです。

こうすると、投資家は100の航空機を取得していることになりますから、航空機の減価償却費を100%享受できますので、受取リース料よりも減価償却費の方が多い場合、税金の繰り延べが可能になるわけです。

<金融商品取引法の適用>
レバレッジド・リースの例を取り上げたのは、金融商品取引法の適用の問題に触れておきたかったからです。

匿名組合出資持分は、二項有価証券です。発行者は営業者です(定義府令14条3項4号ロ)。そして、発行は、匿名組合契約の効力が生じるときです(定義府令14条4項3号イ)。

事例でいえば、SPCが発行者であり、SPCとA社が匿名組合契約を結んで、A社が出資持分を取得したときが二項有価証券である出資持分の発行だということです。

SPCの行為は第二種金融商品取引業です。信託受益権と違って、出資持分の自己募集は第二種金融商品取引業だからです。問題はA社の行為です。

A社は、出資持分を投資家に取得させることを目的に発行者であるSPCから出資持分を取得しています。「取得させることを目的に取得すること」は、「引受け」です。引受けは、第一種金融商品取引業です。では、A社は、第一種金融商品取引業の登録を受けなければならないのか。

結論は「不要」です。

多分に政策的な配慮ですが、定義府令16条1項5号は、資本金5000万円以上の法人である第二種金融商品が、機械類をリースする100%子会社であるSPCから出資持分を取得する行為は、引受けに該当しないと定義しています。

逆にいえば、原則として、組合契約の出資持分を「取得させることを目的に取得すること」は、「引受け」、つまり、第一種金融商品取引業になるということを記憶しておいてください。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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