投資助言業務と第二種金融商品取引業との境目


金融商品取引業者等は、当然のことですが、登録をしていない金融商品取引業を行うことは許されません。一部の金融商品取引業の登録を受けていても、他の金融商品取引業の登録を受けていなければ、他の金融商品取引業もできません。金融商品取引法を厳格に適用すると、登録をしていない金融商品取引業を行った者は、3年以下の懲役です。それにもかかわらず、投資助言業務の登録をしていないにもかかわらず、第一種金融商品取引業や第二種金融商品取引業を行う会社はあとを絶ちません。

<投資顧問会社による第二種金融商品取引業>
平成21年10月20日に行政処分を受けた金融商品取引業者も同様でした。指摘の内容は、以下の通りです。


当社は、平成21年5月初旬から同年6月3日までの間、有価証券での運用を行う匿名組合への出資の勧誘を第二種金融商品取引業の登録を受けず、出資契約の締結に至っている。当該行為は、無登録での私募の取扱いを禁止する金融商品取引法29条に違反する

要するに、「投資顧問会社が第二種金融商品取引業の登録を受けていないのに匿名組合契約への出資の勧誘をした」という点が指摘事項となっています。

<業務停止命令>
同社は、指摘の結果、3ヶ月間すべての業務の停止命令を受けました。投資助言業者ですから、投資顧問契約の締結を3ヶ月間禁止するという処分です。3ヶ月間の業務停止は長いようですが、先にも書きましたように、悪質性があれば、3年以下の懲役ですから、3ヶ月の業務停止でよかったとも判断できます。

<業務改善命令>
業務停止命令が出るときは、必ず、業務改善命令も出ます。「誰のせいで法令違反行為が起きたのかを明確にせよ」という命令は必ず出ます。当局は「責任の所在の明確化」という表現を使用しますが、要するに、「犯人を突きとめよ!」という命令です。ただ突き止めるだけではなく、突き止めたら犯人を社内処分する必要があります。社長の退任が好例です。

業務改善命令には「再発防止策の作成」も必ず付きます。また、「責任の所在の明確化」と「再発防止策」などを書面にまとめて提出することも求められます。この書面のことを「業務改善報告書」といいます。経験則ですが、業務改善報告書は、ただ書けば当局に受理されるというものではなく、二度と同様の法令違反が発生しないために、根本的な原因追究と抜本的な対策を作成し、実行しなければ受理されません。

<なぜ同様の事件が起きるのか>
投資助言業のみの登録をしている投資顧問会社が第一種金融商品取引業や第二種金融商品取引業を行ってしまう例は、あとを絶ちません。

どうしてでしょうか。

原因は様々でしょうけれど、投資顧問会社が有価証券の売買の媒介や私募の取扱いを意識せずに行っているケースが多くみられるようです。例えば、自社が買いを推奨した有価証券を買いたいという顧客を売り手や他の業者に紹介するケース、自社が勧める匿名組合契約への出資を顧客に紹介してしまうケースがあります。紹介は投資助言代理業ではできません。必ず、第一種金融商品取引業か第二種金融商品取引業の登録が必要です。投資顧問業務の行う方は、「買い推奨」と「紹介」とでは、金融商品取引法上、まったく違う行為であることに注意する必要があります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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