AIJ投資顧問事件1


AIJ投資顧問が2000億円近くの運用資産を失った事件で、金融庁は1ヶ月間の営業停止処分としました。

「新聞報道を読んでもニュースを見ても、AIJは何をする会社で、どうして2000億円近くのお金をもっているのか、どんな影響があるのか、信託銀行って何か、さっぱりわからない」という声を聞きます。

そこで、何が起きたのか、一つ一つ解説します。

<企業年金>
すべての企業ではありませんが、全額あるいは従業員と折半で「年金基金」と呼ばれる「箱」にお金を積み立てている企業があります。企業が従業員に年金を支払うためです。

混同されている方がいらっしゃいますが、「企業が従業員」に支払う年金です。社会保障と税の一体改革ということで、国会で喧々諤々やっているのとは違います。あちらは「国が国民」に支払う年金です。

<信託銀行>
この「箱」は、通常、「信託銀行」という銀行が、「口座」として管理しています。年金基金というお金が入った箱が信託銀行の中にあるということです。

ちなみに、信託銀行とは、皆さんが普段お付き合いのある三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行などとは違います。信託銀行は、お金の入った箱を準備できる特別な銀行です。箱に入ったお金は預金ではありませんので、利息はつきません。逆に、「箱」の管理費が取られます。

信託銀行の役割は、企業や投資顧問の指示にしたがって、箱の中のお金で株式や債券の売買をすることです。

今回の事件は、箱に2000億円が入っていたはずなのに、200億円に減っていたというものです。

<投資顧問>
投資顧問は、金融商品取引法に基づいて、投資助言・代理業や投資運用業の登録を受けた金融商品取引業者のことです。

AIJは何をしていたかというと、年金基金という箱にお金を出している企業に任せられて、企業に代わって、AIJの判断で、信託銀行に株式や債券を買えとか売れとか指示を出していました。

企業はAIJにお金の使い方を任せきりだったし、その背景にはお金が減っていたにもかかわず増えているというウソの報告をしていたのだから、指示を出したAIJが悪いだろう、というのでAIJが非難されているわけです。

<従業員>
以上が、事件のあらましです。

ところで、2000億円が200億円になってしまったことで誰が迷惑したか。箱にお金を積み立てていた企業もそうですが、実質的に損をしているのは、企業の従業員です。もらえるはずの年金がもらえないかもしれないからです。

もっとも、年金が積み立てられていることを知っている従業員は多くはないでしょうし、自分の財布が傷んだわけではありませんから、従業員に「損をした!」という実感はないと思います。が、従業員は、大損しています。

<もっと詳しく知りたい方へ>
企業はどうして箱を信託銀行に作っているのでしょうか。なぜAIJの預金口座で管理しないで、管理費まで払って信託銀行を使っているのでしょう。それは、投資顧問は、顧客のお金を預ってはならないという規則があるからです。

ですから、2000億円が200億円になってしまったといっても、真相はまだわかりませんが、通常、AIJが私腹を肥やすために使ったからではなく、信託銀行に管理されていたお金が、AIJの指示の内容が悪くて減ってしまったから、というのが正しい理解です。

その信託銀行は、管理費をもらって箱を管理していたのに、箱の中身が減っていくのをボーっとみていたのか。常識的にはそれもおかしな話ですよね。だから、AIJ事件で、金融庁は、投資顧問だけではなく、信託銀行も調査すると言い出したのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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