AIJ投資顧問事件2


報道によると、金融庁は、AIJ投資顧問のような「投資運用業」の登録を受けている200社余りの金融商品取引業者に、運用成績を正確に顧客に伝えているかどうかなどを把握するため、報告書を提出するように命令したとのことです。

<報告徴取>
金融商品取引法56条の2・1項は、金融庁は金融商品取引業者やその取引先に、投資者保護のため必要があると判断した時には、報告書を提出させることができると規定しています。

一般に「報告徴取」(あるいは「報告徴求」)と呼ばれるもので、命令の一つです。金融庁は簡単には報告徴取命令を出しません。ですから、金融商品取引業者にとって、報告徴取命令は、かなり重い命令です。

もし、報告の内容が不確かである場合、一般的に、今度は、証券取引等監視委員会が実地検査を行います。

<金融庁と証券取引等監視委員会>
金融庁は、大きく分けると、監督局という金融商品取引業者等を日々監督する部門と、検査局という金融商品取引業者等を検査する部門に分かれます。報告徴取を命じているのは、このうちの監督局です。

報告徴取ではわからないこと、不自然な点などがあると、証券取引等監視委員会が実施検査に入ります。

金融庁にも検査局があるのに、どうして証券取引等監視委員会という別の機関が検査をするのかというと、金融庁の検査局と証券取引等監視委員会には役割分担があって、内部管理態勢など、金融商品取引業者の社内体制の整備、具体的には、いわゆるコーポレートガバナンスを検査するのが金融庁の検査局、市場に与える影響を検査するのが証券取引等監視委員会だからです。

<報告徴取記載上の注意点>
このブログを投資運用業者の方がご覧になっているかどうかわかりませんが、投資運用業者に限らず、証券会社であっても、投資顧問会社であっても、第二種金融商品取引業の登録を受けている会社でっても、報告徴取を書くときには、ウソは当然のこと、間違ったことを記載してはなりません。

「人間誰だって間違えることはあるさ」なんて、のんきなことを言えないのが報告徴取の怖さです。間違いは、イコール「ウソ」です。間違いは絶対に許されません。そして、ウソや間違ったことを書いてしまうと、軽くて営業停止、最悪の場合は懲役刑です。

「何を大げさな」と思うかもしれませんが、本当のことです。

どんな間違いが致命傷になるかということは、専門家に相談された方がいいでしょう。もっとも、そんな専門家を私は寡聞にして知りません。

これも報道によると、報告徴取の提出期限は2週間だということです。これは、異例の短さです。金融庁が、AIJ投資顧問事件を重く見ている証拠です。ですから、なおさら、間違ったこと、誤解を与えることを記載しない、また、記載漏れをしないことが、とても重要になってきます。

なお、「2週間だと短すぎるので交渉してみよう」とか「2、3日遅れも大丈夫だろう」とか、ひどいのになると「報告書を書いているヒマがあったら営業しないと」と考える方も、中にはいらっしゃるかもしれません。ただ、それは、「甘すぎ」です。報告徴取の期限は絶対です。報告徴取は交渉ごとではなく「命令」であることを忘れないようにしましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード