AIJ投資顧問事件4


AIJ投資顧問事件の発生原因の一つに金融商品取引法の構造的な問題があります。キーワードは「投資一任契約」です。意味を明らかにするために、いつものように、一つ一つ見ていきます。

<投資顧問会社>
投資顧問会社の本来の業務は何かを考えてみましょう。「投資」「顧問」というくらいですから、投資に関するアドバイザー、つまり、投資助言を行う会社という意味です。あれを買った方がいいんじゃないか、これは売った方がいいんじゃないか、という助言をする会社です。

金融商品取引法では、投資助言・代理業の登録を受けている者を指します。

では、誰が最終的な売買の判断をするのか。誰に決定権があるのか。

決定権は、投資顧問会社を採用した者です。助言を受ける人、年金基金の例では、年金基金です。投資顧問会社の助言は助言として聞き、最終的に売買するのかしないのかを決めるのは年金基金という形が、投資顧問会社と年金基金との関係です。

このとき、投資顧問会社と年金基金は投資助言契約という契約を結びます。

<投資一任契約>
次に、投資一任契約について説明します。投資一任契約とは、投資顧問会社と年金基金との関係でお話しすると、投資顧問会社が、助言をするばかりでなく、一歩進んで、最終的な売買の判断をできることを内容とする投資顧問会社と年金基金との契約のことをいいます。

ですから、年金基金は、投資顧問会社と投資一任契約を結ぶと、何もすることがなくなります。売買の決定権を投資顧問会社に預けてしまうからです。

なお、投資一任契約を締結できるのは、投資運用業の登録を受けている金融商品取引業者に限ります。AIJ投資顧問は、まさに、これでした。

年金基金から見ると、同じ投資顧問会社と結ぶ契約であっても、投資助言契約と投資一任契約では天と地との差があります。最終的な、投資決定権を自分が持つか預けてしまうかの選択だからです。

逆に、投資顧問会社からすると、投資助言契約は、助言はしたけれど決定したのは年金基金なのだから気楽ですが、投資一任契約では、決定も自分でするので、両契約は責任の重さにおいて、雲泥の差があります。投資一任契約を結んだ投資顧問会社は、年金基金を勝手に運用できるから、結果責任が重いからです。

<証券取引法時代>
投資顧問会社は、金融商品取引法の施行前から、顧客と投資助言契約も投資一任契約も結ぶことができました。ただし!投資助言契約を結ぶためには、当局の登録を受ければ良かったのに対し、投資一任契約を結ぶためには、当局の「認可」が必要でした。

なお、投資助言契約や投資一任契約を規定していた法律は、証券取引法ではなく、投資顧問業法です。金融商品取引法に吸収されて今はない法律です。

<現在の投資一任契約>
ところが、金融商品取引法になって、投資一任契約を締結する行為も、「登録」でできることになりました。認可の場合、当局に認可を与えるかどうかの裁量の余地がありますが、登録の場合、登録拒否要件に該当しない者は、当局の裁量の余地なく、登録させなければなりません。

事前行政の余地なく、不適切な業者は事後行政として処分するしかないわけです。

<金融商品取引法の構造的問題>
投資助言契約と投資一任契約とは天と地の差、雲泥の差があるのに、投資一任契約まで登録制度にしてしまったことに、金融商品取引法の構造的な問題があります。

AIJ投資顧問が、投資一任契約を締結することが行政法上可能になったのは、金融商品取引法以前なのか以後なのか知りませんが、投資一任契約は、他人のお金(年金基金など)を好き勝手に運用できる権限を投資顧問会社に与えるという責任の重い契約なのですから、金融商品取引法においても、投資一任契約を締結するためには、認可を必要とすべきです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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