粉飾決算はなぜ悪いのか


報道によると、オリンパスの旧経営陣らが粉飾決算の疑いで告発されたそうです。金融商品取引法違反容疑です。

金融商品取引法は、上場会社等に有価証券報告書等の提出を義務付けています。

有価証券報告書とは何か。

<有価証券届出書>
有価証券報告書を説明するためには、有価証券届出書の説明が必要です。名称が似ていますが、異なるモノです。

株式や社債の発行者は、株式や社債の募集や売出しが行われた際、「有価証券届出書」という書類を財務局(長)に提出しなければなりません。

ここが重要ですが、有価証券届出書には、1.発行者の情報(企業情報)と、2.募集・売出しの対象になる有価証券の情報(証券情報)の、大きく2つの情報が掲載されています。

企業情報の主なものは、財務諸表です。証券情報には募集・売出要項が記載されます。

さて、企業情報と証券情報のうち、変化するのはどちらでしょうか。

そうです。財務情報である企業情報です。募集要項や売出要項は、有価証券届出書を提出した瞬間に確定しますが、財務諸表は時々刻々変化します。

だから、金融商品取引法は、有価証券届出書を提出した企業に、アップデートされた財務諸表を少なくても半期に一度、財務局(長)に提出することを義務付けているのです。主に、募集や売出しで有価証券を取得したり買い付けたりした投資家に、売却するか、保有し続けるかの判断材料を与えるためです。

アップデートされた書類が「有価証券報告書」です。

<有価証券報告書の重要性>
上場企業の粉飾決算とは、金融商品取引法の観点からは、有価証券報告書の虚偽記載と同じ意味です。有価証券報告書の虚偽記載は金融商品取引法違反です。だから、オリンパスの旧経営陣は、金融商品取引法違反の容疑で告発されたわけです。

金融商品取引法違反の中で、有価証券報告書の虚偽記載は最も重い罪です。

なぜ、金融商品取引法は、有価証券報告書の虚偽記載を重罪としたのか。

有価証券報告書の内容が良ければ、有価証券の所有者は安値では売りません。逆に所有していない者は、高値でも買うかもしれません。需給バランスが崩れる結果、株価は上がります。どこまであがるかというと、有価証券報告書に記載された内容から期待される収益(や配当)に見合う価格までです。

有価証券報告書の内容が悪ければ、逆の現象が起こります。

いずれにしても、株価は需給がバランスしたところで決定されます。ここが重要なのです。

金融商品取引法の目的は、有価証券の「公正な価格形成」です。要するに、有価証券報告書に記載された情報が反映され、需給バランスが取れた有価証券の価格を形成させることです。これを妨げる行為は、すべて重罪と規定されています。

粉飾決算がなぜ悪いのか。それは、金融商品取引法の観点からいえば、有価証券の公正な価格形成を妨げ、需給に見合わない高すぎる価格を作出する結果になるからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード