売出しの定義等の改正の影響1


平成21年改正金融商品取引法が平成22年4月1日から施行されています。主な内容は、売出しの定義の改正に伴う、諸制度の改正です。

まもなく施行から丸2年が経つところですが、市場では、まだ、混乱が見られるようですので、再度、改正法の重点をまとめました。

<売出しの定義の改正>
平成21年改正前金商法(以下「旧法」という。)において、売出しとは、1.既に発行された有価証券の売付け勧誘等のうち、2.均一の条件で、3.多数(50名以上、以下同じ。)の者を相手方として行う場合に該当するものでした。(旧法2条4項1号)

平成21年改正金商法(以下「新法」という。)から、2.の均一の条件が削除されました(新法2条4項1号、2号)。

均一の条件が削除されたため、50名をカウントする「通算期間」が規定されました。通算期間規定がないと、例えば、ある外国社債を1名に売付け勧誘等を行ったところ、実は、同一種類の外国社債を10年前に49名に売付け勧誘等を行っていたため、遡って50名以上となってしまい、10年前に有価証券届出書を提出していなければならなかった、ということになりかねないからです。だから、50名を通算する期間の定めが必要なのです。

新法は、通算期間を1ヶ月と決めました(金商法施行令(以下「令」という。)1条の8の3)。例えば、外国社債の売付け勧誘等をする場合、過去1ヶ月間の売付け勧誘等の相手方の数をカウントし、50名以上ならば売出しに該当するということです。

実務では、今後1ヶ月以内に、1.50名以上に売付勧誘等をする可能性がある場合には有価証券届出書を提出するか、外国証券売出し(後述)の手続きをとり、2.50名以上に売付勧誘等をしないと決めたら、私売出し(後述)にするために、1ヶ月間、49名管理(少人数私売出しの場合)をします。

<外国証券売出し-有価証券届出書提出義務の例外>
有価証券の募集又は売出しが行われる際、原則として、発行者は「有価証券届出書」を財務局長に提出しなければなりません。

有価証券届出書には、発行される有価証券の内容(「証券情報」といいます。)と発行者の財務等の情報(「企業情報」といいます。)が記載されます。

例外として、外国証券のうち、一定の要件を満たしたものの売出しに際しては、有価証券届出書の提出義務がありません(新法4条1項4号)。

この、一定の要件を満たした外国証券の売出しを「外国証券売出し」といいます(新法27条の32の2・1項)。売出しなのですが、有価証券届出書の提出が不要な売出しということです。後述する私売出しと混同しないようにしましょう。

外国証券売出しとなるための一定の要件は、有価証券の種類によって異なります(令2条の12の3各号)が、基本的には、1.国内における外国証券の売買価格に関する情報を、インターネット等を通じて容易に取得ができること、2.外国証券が、外国取引所に上場されているか、外国で継続的に売買されていること、3.外国証券の発行者(証券会社は不可です。)により英語又は日本語で公表された発行者の経理情報等を、インターネット等を通じて容易に取得できることの3つが要件です。

この意味は、金融商品取引法の建前に求められます。金融商品取引法は「有価証券の価格はすべての情報を瞬時に織り込み、公正妥当な水準に決まる」という建前の上に構築されています。

従って、1.と2.の要件が満たされるということは、証券情報が織り込み済みであることを意味し、3.の要件が満たされるということは、企業情報が公表されていることを意味します。だから、証券情報と企業情報を記載した有価証券届出書の提出が不要なわけです。

少し専門的な話になりますが、プログラム上場は「上場されている」という要件を満たしません(平成21年12月22日付パブコメ回答71参照)。旧法23条の14、改正前企業開示府令14条の16と異なります。改正前企業開示府令の「上場」は企業開示の方法の一つでしたが、令2条の12の3の「上場」は証券情報の公表方法の一つであり、目的が違うからです。

テーマ : 金融商品取引法
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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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