売出しの定義等の改正の影響2


<外国証券売出し-目論見書交付義務の例外>
証券会社は、募集又は売出しに際し、顧客に目論見書を交付しなければなりません。

目論見書の内容は、有価証券届出書の内容とほぼ同じで(新法13条2項各号、開示府令12条各号)、証券情報と企業情報が記載されている書類です。作成者は発行者ですが、顧客に交付するのは、実務では、証券会社です。

顧客はEDINETで有価証券届出書を閲覧できますが(間接開示)、顧客に閲覧の機会を確実に与えるなら、直接交付した方が確かです(直接開示)。顧客に直接交付される書面が、目論見書です。

例外として、外国証券のうち、証券会社が「外国証券情報」を提供又はインターネット等の方法で公表している場合には、原則として、目論見書の交付義務がありません(新法13条1項、4条1項4号、27条の32の2・1項)。

外国証券情報の内容は有価証券の種類によって異なりますが、基本的には、証券情報と企業情報です(証券情報等府令12条1項)。だから、証券情報と企業情報を記載した目論見書の交付が不要なわけです。

なお、外国証券情報の提供が不要な場合として、発行者が有価証券報告書提出会社で証券情報が提供される場合や、外国証券が適格機関投資家と非居住者の間のみで流通する場合などが規定されています(証券情報等府令13条各号)

<私売出し>
外国証券売出しの要件は、不特定多数に外国証券の売付け勧誘等を行うときに要求されるものです。特定(適格機関投資家あるいは特定投資家のみ)又は少数(50名未満)に外国証券の売付け勧誘等を行う場合には適用されません。特定又は少数に行う売付け勧誘等は「私売出し」と呼ばれ、適格機関投資家私売出し、特定投資家私売出し、少人数私売出しの3つがあります。

私売出しと「売出し」という単語がついていますが、売出しではありません。募集に対して私募と呼ぶことから、売出しに対して私売出しと呼んでいるだけです。私売出しという単語は、金融商品取引法の用語ではありません。

私売出しの対象は、実務的に、外国証券に限られます。国内で発行された有価証券であれば、募集の場合は開示がされていますし、私募の場合は転売制限がついているからです。

私売出しの要件は、私売出しの種類によって異なりますが、基本的に、転売制限をつけて売却することです(新法2条4項1号、2号)。

なお、旧法の外国証券内容説明書は、新法になって廃止されました。なお、旧法時代に外国証券内容説明書を付して売却された外国証券を取扱う場合については、整備府令で手当てされています。この場合、注意しなければならないことは、新法に従い、転売制限を付さなければならないという点です(少人数向け勧誘対象海外発行証券に係る「外国証券の取引に関する規則」の特例に関する規則4条2項)。

<売出しに該当しない取引>
新法には、売出しに該当しない有価証券の取引が定義されています(令1条の7の3)。取引所における有価証券の売買など、いくつもありますが、外国証券の取引に関していえば、譲渡制限のない海外発行証券(注)を証券会社が証券会社に売却する行為は、売出しに(も私売出しにも)該当しません。販売先の証券会社が、売出しの手続きをとるか、私売出しとして転売制限をつけて販売するからです。従って、証券会社に対する販売で、売出しに該当しない取引となる販売は、卸販売に限定されます(平成21年12月22日付パブコメ回答26、27参照)。

(注)「譲渡制限がない海外発行証券」とは、海外で発行されたか、国内で発行されたけれども国内で勧誘が行われなかったために、金融商品取引法の譲渡制限の規制を受けずに海外で流通している有価証券のことです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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