投資顧問会社の当局検査指摘事項1


投資顧問会社に対する当局検査の数は確実に増え続け、それに伴い、業務停止を含む重い処分がくだされています。

今週は、投資顧問会社に対する当局検査の実態を実例を使って説明します。

<検査忌避>
投資顧問会社に限らず、証券会社を除く金融商品取引業者が、検査忌避で業務停止命令を受けている事例が散見されます。なお、証券会社は検査忌避がいかに重い処分につながるかを身に染みて知っているので、検査忌避をする可能性はほとんどないのが実情です。

直近では、検査官が来た当日、職員全員の同意が得られるまでオフィスに入れられないと答えた投資顧問会社の社長がいたようです。また同社は、翌日以降、「社員を全員出社させよ」という検査官の命令に従わなかったそうです。当然、検査忌避です。

開いた口がふさがりません。

この社長は、従業員のプライバシーを重視したのでしょうか。背景はわかりませんが、検査官の立入り検査は、いかなる理由があろうとも、拒絶することができません。「いかなる理由があろうとも」です。

なぜなら、金融商品取引法には、検査官の立入り検査が規定されていて、すべての金融商品取引業者は、それを知って登録を受けているからです。

他にも、「多忙のため」とか「社長不在のため」などの理由で検査官をオフィスに入れなかったとして検査忌避を問われた金融商品取引業者がいます。繰り返しになりますが、すべての金融商品取引業者は、いかなる理由があろうとも、当局検査を拒絶することができません。

検査忌避は犯罪で懲役刑の対象であることを忘れてはなりません。

<偽計を用いる行為>
「必ず儲かる」という投資話をもちかけ、投資の条件として投資顧問契約の締結が必要であると説明したことが「偽計」と判断された事例があります。

偽計とは、普段使用する言葉でいうと「騙すこと」です。

事例の場合、投資をするかどうかと、投資顧問契約を結ぶかどうかとの間に何の関係もありません。にもかかわらず、投資をするためには投資顧問契約を結ぶ必要があるといったことが騙したこと、つまり、偽計と判定されたわけです。

どうして騙したのか、詳細は明らかにされていませんが、例えば、投資顧問会社が、違法にもかかわらず、顧客に対し、投資信託などの有価証券を実質的に勧誘しておきながら、勧誘行為を隠すために、投資顧問契約を顧客に結ばせて、「うちは投資助言をしただけだ」というアリバイ(?)を作ることが目的である場合などが想定されます。

もっとも、このアリバイ工作は、アリバイになっていません。所詮、違法は違法、ダメなのものを何をやってもダメです。

さらに、投資させた顧客に投資顧問契約を結ばせて10万円の報酬を受け取ったことも偽計と判定されています。要するに、投資顧問契約では、助言の対価としてしか報酬を受け取れないのに、助言もせずに、契約締結段階で報酬を受領した行為が、偽計を用いた行為だと判断されたということです。

そもそも、投資顧問会社が顧客に儲け話を持ってくること自体が違法なのです。投資顧問会社が(投資助言契約で)できることは、1.有価証券の価値等に関する助言と、2.金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の助言のみです。

なお、「買い推奨」と儲け話の提供とは異なります。前者は確かに投資助言業ですが、後者は第一種金融商品取引業か第二種金融商品取引業です。儲け話の提供は、取引の「勧誘行為」にあたるからです。すべての投資顧問会社は、この点に注意が必要です。

検査忌避をして、偽計まで用いたこの会社は、当然ながら、登録抹消処分を受けています。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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