投資顧問会社の当局検査指摘事項4


<前書面の不交付と写しの保存義務違反>
投資顧問会社の中には、あろうことか、契約締結前交付書面を交付していない会社があるようです。

論外です。

契約締結前交付書面は、必ず、契約締結の前に、交付しなければ違法です。

「写しの保存」も重要です。金商業等府令181条1項1号に基づき、すべての投資顧問会社は、契約締結前交付書面と、契約締結時等交付書面の写しを保存する義務があります。保存期間は5年です。

「うっかり写しを取るのを忘れた」なんてことは言い訳にならず、当然許されません。保存義務違反は、最長1年の懲役刑です(金商法198条の6・3号)。

なお、うっかり写しの保存を忘れていたことに気づいたとき、「過ぎたことは仕方ない、これからしっかりやればいい」という考えは、甘すぎです。

他社の検査結果をご覧になるとわかりますが、指摘され、行政処分の対象になった違法行為は、過去に起きた(現在は正常な)行為に向けられていることが多いことがわかります。今は正常(適法)だからといって、過去の違法は消えません。では、会社は、過去の違法に対してはどう対処すればよいのでしょうか。金融商品取引法をよく読んで結論を出してください。

<前書面の交付方法>
前書面の交付方法について、以下の指摘事例があります。

「当社は、契約締結前交付書面に記載すべき事項を当社のホームページに掲載し、当該記載事項を顧客の閲覧に供するという電磁的方法をもって提供することとしているが、電磁的方法により当該記載事項を提供することについて、あらかじめ顧客の承諾を得ていなかった」

前書面の交付方法は、原則として手渡しか郵送です。例外として、顧客の事前の承諾があった場合に限り、メールに添付して送ったり、ホームページに掲載して提供したりすることができます。

事例の指摘事項は、この事前の承諾を得ていなかったのに、前書面をホームページに掲載する方法で提供していた(から金融商品取引法違反)というものです。

<当局検査の傾向>
金融商品取引法の施行以前、投資顧問会社に当局検査が入ることは珍しいことでした。金融商品取引法施行後、投資顧問会社も当局検査が頻繁に入るようになり、指摘を受けて、登録抹消処分を受ける会社も出てきました。

投資顧問会社に対する当局検査は今後も厳しくなる一方です。違法行為をしている会社を市場から排除するためです。投資顧問会社を維持したければ、まず、経営者自身が金融商品取引法に精通することです。そして、優秀なコンプライアンス担当者を採用して、コンプライアンス体制の構築をさせる。

当局検査が厳しさを増す中、生き残るために、他に方法はありません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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