肩透かしをくらったAIJ社長の国会招致


AIJ投資顧問会社の社長が昨日の衆院財務金融委員会の参考質疑に出席しました。ニュースで一部の様子が流れました。社長の発言は、実質的な被害者である年金基金の加入者から見ると「反省の色なし」と憤慨しているところと思います。

反省していたかどうかはわかりませんが、少なくても委員が勉強不足のため、昨日は社長にうまくかわされてしまったのは事実です。

<運用報告書の虚偽記載について>
「監査報告書に虚偽記載をしたのはダマすつもりだったのでないか」という趣旨の質問を委員がしていました。対する社長の回答は「監査報告書ではなく運用報告書」、「NAVを記載しただけ」という内容のものでした。

感情論は別にして社長の回答は正しいです。新聞でも社長が知人の公認会計士に監査報告書の虚偽記載をさせたとありましたので、委員は監査報告書といったのか。あまりの勉強不足。投資運用業の結果報告書は、金融商品取引法に規定された運用報告書です。

NAVとはNet Asset Valueのことで、純資産額のことです。NAVの自由度は高いので、ダマすつもりはなかったと言われればそれまでです。委員はNAVの意味を理解しているとはとても思えませんでした。ここで質問すべきだったのは、「NAVの評価が正当であるという根拠を示せ!」です。委員の勉強不足です。

<損失の穴埋めについて>
さらに委員は、「損失を社長自身の全財産を投じても返金すべきじゃないのか」という趣旨の質問をしたため、社長はできないと回答しました。それはそうです。穴埋めをしたら、「損失補てん」という刑罰を伴う金商法違反に問われる可能性があるからです。

委員が質問すべきだったのは「損失は社員の不正行為が原因だったとして、当局に確認をもらい、損失を補てんすべきではないか」です。法令違反や不正行為が原因で生じた損失の補てんは、当局の確認を受けて行えば違法とはならないからです。委員の勉強不足が原因で、責任追及ができなかったわけです。

<国会議員の責務>
せっかく参考人として国会招致して質問をする機会ができたにもかかわず、委員の金融商品取引法の勉強不足が原因で、肩透かしをくらってしまいました。国会議員なら法律の勉強くらいしておいてもらいたいものです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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