第二種金融商品取引業の当局検査2


<名義貸し>
名義貸しとは、金融商品取引業者等が、自社の役職員以外の者に、自社の名前を使わせて、勧誘や取引を行わせる行為のことをいいます。

ちなみに、名義貸しは「メイギガシ」と読みます。

例えば、第二種金融商品取引業の登録を受けている不動産会社が、自社が所有する不動産信託受益権を販売しようとする際に、登録を受けていない不動産会社に売買の媒介をさせる行為が、「名義貸し」に当たります。

先日、あり不動産会社の社長が「不動産の仲介なら3%なんに、うちみたいに、登録していない不動産会社が不動産信託受益権の仲介をすると1%しかもらえないんだよね。うちも、登録とろうかなあ」といっていました。

「社長、あなたは既に金融商品取引法違反で、懲役3年以下の刑事罰を課されますよ」と説明したところ、「いや、だから、1%しかもらっていないから大丈夫だよ」というんです。どうやら、大手の不動産会社(二種登録)が、「1%の手数料なら、金融商品取引業者の登録をしなくても、仲介(売買の媒介や買主の紹介)ができる」と説明しているらしいことがわかりました。

すべての不動産会社ではないのでしょうが、金融商品取引法に対しては、いい加減な不動産会社が結構いるものだということを、後で友人の行政書士から聞きました。

この事案の場合、大手の不動産会社(二種登録)は、無登録の不動産会社に、自社の名義を貸して、買主に対して、信託受益権の売付け勧誘等をさせていることになり、大手の不動産会社の行為は、「名義貸し」という違法行為です。

他の事案としては、第二種金融商品取引業者の社長が、登録を受けていない、知人が代表をしている会社に、匿名組合出資持分の取得勧誘をさせた行為が「名義貸し」であると指摘されている事件があります。

結局、金融庁(財務局)は、第二種金融商品取引業者に対して、2ヶ月間すべの業務の停止を命じる行政処分を行っています。

<適用範囲>
名義貸しが禁止されている理由は、これを許してしまうと、金融商品取引業者等の登録制度の意味がなくなってしまうからです。ですから、典型的には、他人に自社の名義を使わせて、取引を成立させようとする行為が名義貸しです。

ただ、実務は、もっと幅広く、名義貸しの成立を認めているようです。先ほどの大手不動産の事例も、登録していない不動産会社に、明示的には名義を貸しているわけではないと思いますが、全体としてみると、名義貸しとみなされる可能性が高いです。

第二種金融商品取引業者の多くは不動産会社です。不動産取引では、もともと、一つの案件に、大小複数の不動産会社が媒介に入るケースが多く見られます。そうやって、もちつもたれつの関係を作り、仕事を回しています。

その延長線で、不動産信託受益権の案件までも、金融商品取引業者等の登録をしているかどうかにかかわらず、複数の不動産会社が媒介に入るケースが生じる可能性があります。

不動産信託受益権と、不動産(土地及び建物)は、行政法上、まったくの別物です。不動産の登記に「信託設定」とあったら、登録を受けている不動産会社は、受けていない不動産会社を媒介に入れないようにしなければなりません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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