基本を学ぼう5


さて、ここまで、大丈夫でしょうか?

早く金商法に慣れ親しんでいただくために、あえて金商法特有の単語を頻繁に使ってお話していますので、「もうムリ!」と金商法の理解をあきらめてしまいそうな方もいるかもしれません。

でも、大丈夫。だって、金商法を理解するなら、対象と(有価証券取引とデリバティブ取引)、わずか3つの規制(開示規制、行為規制、不公正取引規制)を覚えるだけでいいんですから。

最後は、「不公正取引規制」の説明です。

<不公正取引規制>
不公正取引規制は、すべての人に適用される規制である点で、行為規制と異なります。しかも、すべて犯罪です。

例えば、インサイダー取引規制。インサイダー情報を知っている人は、一定の有価証券取引やデリバティブ取引をしてはならないという規制です。

実は、似た規制が行為規制にもあります。金融商品取引業者等は、法人関係情報を利用して一定の有価証券の売買をしてはならないという規制があります。法人関係情報とは、インサイダー情報に近い意味です。

ただし、法人関係情報を利用した取引が制限されるのは金融商品取引業者等だけです。行為規制だから当然です。しかも、(インサイダー取引と認定されると別ですが)違反したからといって、刑事罰が科されるわけではありません。行政処分の対象にはなりますが。

一方、インサイダー取引規制は誰がやっても違反です。不公正取引規制だから当然です。しかも、違反したら、刑事罰が科される可能性があります。

このような不公正取引規制と行為規制の相違点は覚えておきましょう。

<不公正取引規制の機能>
不公正取引規制の機能・役割は何でしょうか。

典型的な不公正取引の中に、相場操縦の禁止があります。

例えば、本当は取引が閑散としている銘柄なのに、さも活発に取引が行われているかのような誤解を引き起こすことを目的にして、仮装取引(一人で売り注文と買い注文を出す行為)や馴合売買(二人以上で売り注文と買い注文を出し合う行為)をすることは「相場操縦」として禁止されています。

活発だと誤解して取引に参加した一般の投資家が、不測の損害を被るおそれがあるからです。

不公正取引規制の機能は、相場操縦の例に見られるように、一般の投資家が不測の損害を被る可能性のある一定の取引を禁止することによって、そのような損害を防止する点にあります。

<規制の目的>
では、開示規制、行為規制、不公正取引規制は、何のためにあるのでしょうか。この質問は、金商法が、3つの規制から成り立っているのですから、金商法は何のためにあるのでしょうかというのと同じ意味です。

金商法の目的は何かということです。

目的については既に書いていますが、繰り返すと、「公正な価格形成」にあります。事例として、上場株券の株価を考えてみましょう。

上場会社が開示規制違反、例えば、虚偽の有価証券報告書を公表したらどうなるでしょう。「粉飾決算」と呼ばれる行為です。本当は赤字なのに、大幅な黒字であるという虚偽の有価証券報告書を公表するのが典型例です。

証券会社が行為規制違反、例えば、「この株は絶対に上がります」と断定的判断の提供をする行為が典型例です。

さらに、不公正取引が行われたらどうなるでしょう。相場操縦が典型例です。

いずれの違反が起きても、株価は公正な(本来あるべき)価格になりませんよね。

つまり、金商法は、開示規制、行為規制、不公正取引規制という3つの規制を通じて、対象となる有価証券取引とデリバティブ取引において、公正な価格形成がなされることを目的として存在する法律なのです。

金商法の条文を読むときには、いつも、「価格」に与える影響を考えながら読むようにしましょう。膨大な数の金商法と関連法令・諸規則の条文が、ほとんどすべて理解・記憶できるようになります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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