基本を学ぼう7


有価証券の売買のうち、有価証券の売付けと有価証券の売出しとは何が違うのでしょうか。

有価証券の売付けとは、既に発行された有価証券を売却する行為です。有価証券の売出しの定義は、既に発行された有価証券を不特定多数に売却する行為です。

確かに、売出しの場合は、「不特定多数」を相手方としない場合には成り立ちませんが、有価証券の売付けだって、不特定多数を相手方にするかもしれません。すると、有価証券の売付けと有価証券の売出しの違いはないことになります。

ところが、金商法で有価証券の売付けは2条8項1号に規定されているのに対し、有価証券の売出しは2条8項4号と違うところで規定されています。

<売付けと売出し>
結論から先にいってしまいますと、有価証券の売付けは、有価証券の売出しの一類型と考えるのが自然です。有価証券の売出しのうち、金商法が特別に有価証券の売出しから除外している行為が有価証券の売付けであると考えられます。

平成21年の金商法の大改正まで、有価証券の売出しは、既に発行された有価証券を不特定多数に「均一の条件で」売却する行為を意味していました。そこで、有価証券の売付けは、既に発行された有価証券の売却のうち、均一ではない条件で売却する行為ととらえることができました。

ところが、平成21年改正で、売出しの定義から均一の条件が削除されてしまったために、有価証券の売付けと有価証券の売出しの差がなくなってしまいました。

「いや、有価証券の売出しは不特定多数を相手方とする売付け勧誘であり、売付けはそれ以外を指すから、違うものだ」という方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、それはおかしい。なぜなら、不特定多数の反対語は、特定又は少数ですから、売付けは不特定多数ではない者を相手方とする売却だと考えると、売付けは、特定、つまり、適格機関投資家私売出しか特定投資家私売出し、又は、少数、つまり、少人数向け私売出しだということになってしまうからです。これは、明らかに間違いです。

ですから、平成21年改正以降、有価証券の売付けは、明確に有価証券の売出しの一類型になったと考えるべきでしょう。

「いや、売出しは勧誘行為を指すが、売付けは売却行為を指す」という反論もありそうです。これもおかしな話です。なぜなら、売付けを行う直前には売出し同様、勧誘行為が存在するからです。

ここまで、大丈夫でしょうか。

以上から、「有価証券の売付けとは、売出しに該当しない売付け行為である」という結論が導き出されます。では、売出しに該当しない売付けとは何か。詳しくは、令1条の7の3をご覧ください。

<重要なのは全方位的考察>
金融商品取引業のトップバッターに上げられている「有価証券の売買」でさえ意味をおさえるのは簡単ではありません。というより、かなり難しいです。

金商法の基本を学ぼう!のシリーズでいいたかったことは、ある規定を見たら、金商法のあらゆる条文を全方位から考察しなければ、正しい解釈ができないということです。

そこだけ見ていると、大怪我をします。

金商法の基本、それは、一つの条文を見たら、金商法のあらゆる条文を全方位的に考察しなければならないということです。全方位的考察が最も重要であるということを忘れないようにしましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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