顧客のインサイダー取引の防止1


古い友人から「インサイダー取引の記事を書いて欲しい」という依頼がありました。インサイダー取引やインサイダー取引に関係する情報管理のあり方について、最近では、野村証券、SMBC日興証券と、連続して、情報管理の甘さが指摘されたことが記憶に新しいところです。

2つの事件の真相はわかりませんが、一つだけわかったことがあります。内部情報(株価に影響を与える未公表の情報のことでインサイダー情報ともいいます)や内部情報と思われる情報に対する認識が甘い証券職員がいるということです。

内部情報の管理について、私個人の経験を話します。

10年ほど前に私が勤めていた外資系投資銀行のトレーダーに、海外のヘッジファンドばかりを相手に取引をしている外国人トレーダーがいました。彼が何をしているか聞いたところ、上場会社が国外で発行するワラント債、つまり、新株引受権付社債ですが、ワラント債のワラント(新株引受権)をワラント債から分離して販売した場合の海外のヘッジファンドの買取希望価格を聞いているというのです。

ここは、証券会社の専門部門にいないと難しいかも知れませんが、ポイントだけお話すると、外国人トレーダーが、上場会社が新株引受権を発行するという未公表情報を海外のヘッジファンドに流していたということです。もっと単純化すると、内部情報を漏らしていたという話です。

内部情報を他人に流すこと自体は、実は、金融商品取引法で禁止されていません。内部情報を利用して顧客に取引させようとしたり、内部情報を知った顧客が取引をしたりする行為が禁止されているだけで、単に、内部情報を流す行為は、現在の金融商品取引法でも禁止する明文はありません。

彼は、自分の行為が証券取引法(現金融商品取引法)違反でないことを理解していました。でも、私は猛反発!内部情報を流すことは違法でなくても、内部情報を受け取った者が行う関連取引は違法なのだから、違法行為を誘発するような彼の行為は一切禁止すると。

彼は、違法じゃないのにダメと言われても俺はやると聞きません。「どうしてそんなことをする必要があるのか」と聞くと、「ヘッジファンドの買取希望価格は、ワラント債の発行者がワラント債の発行コストを計算する上で必要な情報だから、買取価格を聞く調査は必要なんだ」というのです。

結局、ものわかれ。最終的に、経営者と私の同僚と私と問題のトレーダーの4人で緊急会議を行いました。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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