顧客のインサイダー取引の防止3


当局検査では、社内ルール通りに運用されていることが確認されました。実際に、厳格にルールを遵守していましたので、問題にはなりませんでした。

金融商品取引法に詳しい方は、既にお気づきかもしれません。

この社内規則は、後に、金商業等府令117条1項15号となりました。また、当該条文を受けて、日本証券業協会規則「協会員におけるプレ・ヒアリングの適正な取扱いに関する規則」が制定されました。

金商業等府令の方について簡単に触れておきましょう。

<需要調査>
金商業等府令117条1項15号は、少し読みにくい規定ですが、要するに、上場会社等が、会社法でいう募集株式や募集新株引受権の募集に際し需要調査をするのはいいけれども、次のルールを守ること、という意味です。

次のルールというのが、まさに、私が勤めていた会社で作ったルールの模倣です。

ルール1として、需要調査を行うことや調査対象者や調査対象者に提供される法人関係情報の内容等々が適切であることについて、コンプライアンス部門があらかじめ承認していること。

ルール2として、調査対象者に、関連株券の取引等をしないこと、法人関係情報を他に漏らさないこと約束させること

ルール3として、需要調査の責任者と担当者の氏名、調査対象者の氏名と住所、法人関係情報の内容と提供の日時と方法を記載した書面を作成し、作成した書面を5年間保存すること

<違反した調査対象者>
調査対象者が、違反して関連株券の取引等をしてしまったらどうなるか。まず、インサイダー取引です。

この条文を受けた日本証券業協会規則は、原則として、証券会社が国内募集に係るプレヒアリング(需要調査)を禁止しています。この規定には賛成しかねますが、それはともかく、ということは、プレヒアリングの調査対象者は、外国人(非居住者)ということになります。

ですから、金商業等府令117条1項15号は、(条文上は別ですが)実務的に、外国人による国内におけるインサイダー取引の未然防止のために設けられた規定であるということになります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

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