適格投資家投資運用業


適格投資家向け投資運用業(適格投資家運用業)について、簡単に触れておきます。

<投資運用業>
適格投資家向け投資運用業は、「顧客を適格投資家に限定した小規模な投資運用業」です。ここで、注意すべき点は、適格投資家向け投資運用業は、投資運用業であることには変わらないという点です。ですから、原則として、投資運用業に適用される条文はすべて適用されます。例えば、投資運用業を行う者(投資運用業者)の業務の範囲に関する金商法35条は、適格投資家運用業者を行う者(適格投資家運用業者)にも適用があります。

登録要件の緩和ばかりが強調されているサイトが散見されますが、適格投資家運用業者にも投資運用業者に適用されるのと同程度の厳しい規制が原則として適用されるという点を忘れないようにしましょう。

<登録要件>
登録要件は緩和されています。

会社の組織として、一般の投資運用業者は取締役会設置会社か、委員会設置会社でなければ登録されませんが、適格投資家運用業者は監査役設置会社であれば足ります(法29条の5・1項本文)。資本金は、一般の投資運用業者は50百万円以上ですが、適格投資家運用業者の資本金は10百万で足ります(令15条の7・1項5号)。

他は緩和ではなく制限されます(法29条の5・1項各号)。

すべての運用財産に係る権利者、要するに出資者は適格投資家のみでなければなりません。適格投資家とは、特定投資家と保有資産100億円以上の厚生年金基金と企業年金基金、保有資産300億円以上の法人や業務執行組合員などです。私は、ここは、府令(定義府令10条1項19号)を改正して、ストレートに年金基金をすべて適格機関投資家にしまう方が素直だと考えます。

すべての運用財産の総額は200億円以下です。小規模な投資運用業を想定して作られた制度ですから当然のようですが、日本の金融資産が海外に流出することを防止する目的もあったとされる制度としては、受け皿が小さいといわざるを得ません。

<監督指針の改正>
注目すべきは、監督指針の改正です。最大の改正点は、独立したコンプライアンス部門(担当者)の設置について、コンプライアンス業務を弁護士等に外部委託できるとした点です。

弁護士等にコンプライアンス業務を外部委託する場合には、「委託している弁護士等は、金融商品取引業に関し法令等を遵守するために必要な指導等を適正に遂行することができると認められる者である」(監督指針206頁)ことが求められていますが、関財の登録実務において、外部委託先弁護士等と認められる者の基準が厳しいことがわかってきました。

なお、投資助言・代理業者にもコンプライアンス業務の外部委託が認められる場合があるとされましたが(平成24年2月15日付パブリックコメント回答8頁~9頁)、金融商品取引業者等が、コンプライアンス業務を外部委託した場合であっても、金融商品取引業者等が法令等違反や社内規則等違反など不適切な事件を起こしたときの責任は、委託者である金融商品取引業者等にあることに変わりはありません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード