私募の取扱い(1)


4月1日施行の「売出しの定義の改正」と「私売出し」については、こちら<平成21年改正法>をクリックしてご覧ください。



私募の取扱いは、金融商品取引法に独特な言葉であり考え方です。普通の(?)言葉で言うと「仲介」に近い考え方です。有価証券の私募の取扱いは、金融商品取引業者以外の者がすることはできません。第一項有価証券であれば第一種金融商品取引業の登録が必要です。第二項有価証券であれば第二種金融商品取引業の登録が必要です。

私募の取扱いは3種類ありますが、それぞれの説明の前に、私募の取扱いとはどういうものか、3種類の私募の取扱いの共通点は何かについてお話します。

<私募の取扱い>
「私募」とは、有価証券の発行者が「限定された投資家」に有価証券を取得させる行為のことです。不特定多数という言葉と比較してみると、不特定でも少人数の投資家に限定する、多数でも特定の投資家に限定する、このような有価証券の発行方法を金融商品取引法は「私募」という言葉で定義しています。投資家が不特定多数になると「募集」になります。

株式会社が社債を限定された投資家に取得させる行為や、不動産信託受益権のオリジネーターが限定された投資家に限定させる行為が私募です。海外の会社が社債を発行して国内の投資家に取得させたり、海外のLLPが国内で出資持分を取得させたりする行為も、投資家が限定されていれば私募です。

私募の「取扱い」とは、株式会社が社債を発行するとき、不動産のオリジネーターが不動産信託受益権を販売するとき、海外のLLPが国内で出資持分を取得させたりするときに、発行者と投資家の間の契約を成立させるために頑張る行為のことです。要するに、限定された投資家の中から、お金を出してくれる人を探す行為が「私募の取扱い」です。

なお、既に発行された有価証券や出資持分の買付勧誘も「私募」と呼ぶ方が非常に多いですが、これは間違いです。私募とは、投資家が、発行者から直接(あるいは金融商品取引業者等を通じて、実質的に直接)有価証券や出資持分を取得する場合のみの行為で、発行者から最初に取得したした者以外の投資家が買付ける行為は、私募ではありません。金融商品取引法の言葉の定義に過ぎませんが、二つの行為は異なることに注意しましょう。

<私募の取扱いの顧客>
私募の取扱いは、発行者と投資家との取引を取り次ぐ行為ですので、当事者は二人以上います。ですから、金融商品取引業者等にとって、私募の取扱いの顧客は、発行者と投資家のどちらなのか、発行者と投資家の両方なのかが、実務上、問題になります。結論から、先に言ってしまいますと、金融商品取引業者等にとって、私募の取扱いの顧客は、発行者だけで、投資家は顧客ではありません。

金融商品取引法は、顧客が一定の特定投資家の場合には一般投資家に移行できる旨を告知することを金融商品取引業者等に義務付けています。実務において、私募の取扱いのとき、顧客が発行者なのか投資家なのかをはっきりさせておかないと、金融商品取引業者等はどちらに、あるいは両方に告知しなければならないのか決定できません。

私募の取扱いは、発行者に代わって、発行者のために投資家を探す行為です。仮に、私募の取扱いの際に金融商品取引業者等が発行者から手数料をもらわなかったとしても、それどころか、投資家から手数料をもらっていたとしても、発行者に代わって、発行者のために投資家を探す行為が私募の取扱いなのですから、顧客は発行者です。ですから、私募の取扱いを行う金融商品取引業者等は、発行者が一定の特定投資家や一般投資家の際には、発行者に告知をする義務を負います。投資家に対してではありません。

もっとも、実務上、金融商品取引業者等は、金融庁のパブリックコメントの回答を受けて、私募の取扱いの際に、投資家も顧客と捕らえて対応していますし、投資家保護の観点からは、そうあるべきですが、金融商品取引法上は、私募の取扱いにおける顧客は発行者であるということを忘れて、発行者に対して告知などを怠らないようにしなければなりません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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