売出しの実務3


前回の続きです。

<疑問1>
売出しを行った社債の売残りを販売する行為も売出しに該当し、再び発行者による届出が必要なのか。また、目論見書の交付も必要になるのか。

<有価証券届出書について>
まず、忘れてはいけないことは、有価証券の販売は、原則として売出しであり、売出しは、原則として発行者による届出がなければなされてはならないということです。

したがって、証券会社が、売出しを行った後、売れ残った社債を販売する行為も、売出しです。では、(再び)発行者による届出が必要なのか。

金融商品取引法4条1項3号に、「届出不要の有価証券の売出し」として、「その有価証券に関して開示が行われている場合における有価証券の売出し(前二号に掲げるものを除く。)」と規定されています。

有価証券の売出しであっても、当該有価証券について開示が行われている場合には、発行者による届出が不要だということです。開示が行われている有価証券の販売も、原則として売出しだけれども、発行者による届出は不要の売出しだというわけです。

ここで、2点、注意すべきことがあります。簡単な方から説明すると、規定には「前二号に掲げるものを除く」とあることです。これは、ダブりを避けるための注意的文言です。深い意味はありません。

問題は、「開示が行われている場合」です。

開示が行われている場合とは何か。

金融商品取引法4条7項に「開示が行われている場合」が規定されています。規定によると、開示が行われている場合とは、既に行われた売出しに関する届出の効力が生じている場合とあります。

では、効力が生じている場合とは何か。

効力が生じている場合については、金融商品取引法8条1項が、財務局が有価証券届出書を受理した日から15日を経過した日を効力が生じた日とすると規定しています。

ちょっと、休憩しましょう。

このように開示規制は、条文が飛ぶので、かなり読みにくくなっています。探すのだけでも大変です。開示規制が複雑であるという印象を与える理由の一つです。

休憩おわり、です。

以上をまとめると、既に行われた売出しの届出の効力が生じている場合における有価証券の売出しは、届出不要ということになります。

したがって、疑問1の届出に関する回答としては、売出しを行った社債の売残りを販売する行為は、当然、売出しの届出の効力が生じている場合における有価証券の売出しですから、再度の届出は不要ということになります。実務的にいえば、届出がなくても、50名以上に売付け勧誘等ができるということです。

ここまで、大丈夫でしょうか。結論だけではなく、根拠も記憶することが大切です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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