売出しの実務5


<疑問2>
売出しを行った社債の打ち返し玉(跳ね返り玉)の再販も売出しに該当し、再び発行者による届出が必要になるのか。また、目論見書の交付も必要になるのか。

<発行者による届出>
売出しを行った社債の打ち返し玉(跳ね返り玉、買戻し)の再販も、原則として売出しです。繰り返しになりますが、有価証券の販売は、原則として売出しです。ですから、打ち返しの再販売も、原則として、売出しに該当します。したがって、原則に従えば、発行者は届出を行わなければなりません。だから、発行者が届出を行っていなくても、50名以上に売付け勧誘等を行っても問題ありません。

ただし、既にお話しているように、開示が行われている有価証券の売出しは、売出しには違いありませんが、金融商品取引法4条1項3号から、届出不要の売出しに該当します。

<私売出し>
話は脱線しますが、私売出しについて若干触れておきます。

私は、一貫して有価証券の販売は、原則として売出しだと主張しています。例外は「私売出し」ではありません。例外は、金融商品取引法施行令1条の7の3に規定する取引、例えば、証券取引所における有価証券の売買です。

売出しと私売出しは、募集と私募と違い、完全な対の概念ではありません。募集を定義する金融商品取引法2条3項は「募集に該当しない」勧誘行為は私募であると規定していますが、売出しを定義する金融商品取引法2条4項には、私売出しという言葉は出てきません。ちなみに、私売出しは、金融商品取引法2条8項1号に規定する有価証券の売買の「売り」の一種です。

では私売出しとは何かについては、項目をあらためて説明することとします。ここでは、募集と私募の関係と、売出しと私売出しの関係は必ずしも同じではないということを記憶しておくことしましょう。

<目論見書の作成>
売出しを行った社債の打ち返しを再販する場合、目論見書の作成が必要か。これは、企業内容等の開示に関する内閣府令11条の4各号から、私は社債の再販は、売出しであっても、目論見書の交付は不要であると解しています。実務的にいえば、50名以上に勧誘しても目論見書の作成(交付)は不要だということです。

以上から、売出しを行った社債の打ち返し玉の再販は、売出しに該当するけれども、金融商品取引法4条1項3号から、原則として発行者は届出不要であり、企業内容等の開示に関する内閣府令11条の4号から、目論見書の作成(交付)も不要であると解しています。実務的にいえば、何もしないで50名以上に勧誘可能という解釈です。

<3か月の目論見書の更新>
「金融商品取引法15条6項から、売れ残った社債について、効力発生日から3か月は目論見書を交付しなければならない義務があることは知っているが、情報を更新しないで良いのか」とよく尋ねられます。結論は、「理論上、更新の義務はない」です。なぜなら、既に開示され社債については、目論見書の作成義務がないのですから、理論上、新たに作成されることは、原則としてないからです(作成されないものは交付できない)。

ただ、3か月の間に重要な事実が発生し、販売証券会社が当該事実を知っていた場合であっても開示しないというのは開示規制の趣旨に反しますし、証券会社としては誠実義務違反にも問われかねないので、重要事実の開示は、内部者情報である場合など開示できない事情がない限り、行う方が良いでしょう。


さて、ここまでの説明は、国内で発行された社債、国内社債の話です。外国で発行されたか、国内で発行されても国内で勧誘行為が行われなかった社債、外国社債の取扱いには、国内社債の規制とは全く異なる規制が適用されます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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