売出しの実務6


<私売出しと国内社債>
既にお話しましたように、売出しと私売出しの関係は、募集と私募の関係とは違います。なぜなら、国内で発行された社債、国内社債には、原則として、私売出しの適用の余地がないからです。

なぜか。

国内社債は、必ず、募集か私募で発行されます。他はありません。

募集で発行された場合には発行者による届出がなされます。流通市場では、既に開示された有価証券の売出しとして取引されます。

既に開示された社債(届出の効力が生じている社債)の売出しは、再度届出を行ったり、目論見書を交付したりしなくても、売出しが可能です。(わからない方は前回までの「売出しの実務」をご覧ください)

私募で発行された場合には「転売制限」が付されます。適格機関投資家限定の社債であればその旨、分割禁止制限がある社債あるいは一括譲渡制限がある社債であればその旨が、原則として、文書で告知されます。

一度転売制限が付された社債は、原則として、償還まで同じ転売制限が付されます。

以上のように国内社債は、募集又は私募(発行)段階から開示規制上の手当てがなされるため、私売出しを概念することができないわけです。

<私売出しの適用>
では、私売出しはいつ適用されるのか。

国内で募集又は私募で発行されなかったために、法定開示も行われていなければ、転売制限も付されていない社債、開示規制上の手当てがなされていない社債、つまり、外国で発行されたか、あるいは、国内で発行されはされたものの外国でのみ勧誘された社債である外国社債に適用されるわけです。

<私売出しの要件>
私売出しの要件は、私募の要件と同じと考えて実務上問題ありません。つまり、プロ私募の場合であれば、適格機関投資家限定という転売制限を付せばよく、少人数私募の場合であれば、分割禁止制限、あるいは、一括譲渡制限の転売制限を付せば良いことになっています。

一点異なるのは、通算期間です。少人数私募の場合、50名計算は、過去6か月間通算すれば良いですが、少人数私売出しの場合、50名計算は、過去1か月通算する必要があります。

<外国債券の売出し>
なお、混乱されるかもしれませんが、外国で既に発行されてしまっている社債であっても国内で売出しはできますので、念のため。

ただし、外国債券の売出しには例外規定があります。それが「外国証券売出し」です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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