価値等の助言と投資判断の助言


金融商品取引法は、投資助言・代理業という金融商品取引業を行う者の登録を義務付けています。金融商品取引法の施行前の投資顧問業法の投資顧問業務とほとんど同じですが、多少異なります。

<有価証券の価値等の助言>
有価証券の価値等の助言を行い、報酬を受け取る契約は、投資顧問契約であり、投資顧問契約に基づいて助言を行う行為は、金融商品取引業です。ここで重要なことは、「有価証券の価値等」の意味と、「報酬」の意味です。

有価証券の価値等とは、株券の価格や株価オプションの価値など、有価証券の価格や有価証券に関連するデリバティブ取引で支払う金額のことを指します。言い換えると、有価証券でないものや、有価証券に関連しないデリバティブ取引で支払う金額は、有価証券の価値等には含まれません。有価証券の価値等に含まれない商品に対する助言行為は、どう転んでも、金融商品取引業には該当しないということです。

報酬とは、普通の(?)言葉と同じで、何かをしたことに対して受け取る対価のことです。報酬という名称でなく、手数料でも助言料でも、名称が何であっても、とにかく、「助言」に対して受け取る金銭等を指します。ですから、有価証券の価値等について助言を行っても、金銭等を一切ももらわなければ、金融商品取引業ではありません。

逆に、金銭等をもらっても、助言に対する報酬でなければ、有価証券の価値等について何を言っても金融商品取引業に該当しません。例えば、かなり怪しいですが、ホームページで株価について助言を行っているんだけれども、助言に対する報酬はまったく受け取らずに、ホームページの維持費として金銭を受け取る行為は、金融商品取引業に該当しないことになります。もっとも、怪しいと言った通りで、ホームページの維持費という名目でも、実質的に株価についての助言に対する報酬の性格をもった金銭を受け取る行為は、金融商品取引業と考えた方が安全でしょう。

ちなみに、投資顧問契約に基づき助言をする行為が金融商品取引業ですが、投資顧問契約は必ずしも、契約書の形である必要はありません。「投資顧問契約の契約書がないのだから、金融商品取引業にならない」という解釈はできないということです。

<金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の助言>
金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の助言をして報酬を受け取ることも金融商品取引業です。投資助言・代理業の登録を受けなければできません。ここで重要なことは、「金融商品の価値等」の意味と、「投資判断の助言」の意味です。

金融商品とは、有価証券、金利、為替のことを指します。金融商品の価値等とは、有価証券の価値等の説明と同じように、有価証券や為替の価値と有価証券や為替に関連するデリバティブ取引に支払う金額のことを意味します。ですから、有価証券ばかりでなく、ドル/円相場の価値について助言を行い報酬を受け取ると金融商品取引業に該当する、かというそうではありません。

確かに、有価証券の場合は、価値について助言をして報酬を受け取ると金融商品取引業でしたが、為替の場合は、価値について助言をして報酬を受け取っても金融商品取引業にはなりません。なぜなら、為替の場合は、価値の分析に基づく「投資判断の助言」をしない限り、金融商品取引業にはならないからです。具体的にいうと、ドル/円相場の分析をして、「米国国債の発行が増えているので、1年後には米国の金利は上がる。だから、1年後には円安に向かいます」という助言をしても、価値の分析までしてはいますが、投資判断をしていないのですから、金融商品取引業には該当しないということです。

このような金利や為替の価値分析をして報酬を受け取ることが金融商品取引業になると、元来、銀行の本来的な業務である通貨の交換に際して顧客に助言をする行為が金融商品取引業になってしまい不都合です。

為替の将来見通しのレポートを作成しているだけの会社が投資助言・代理業の登録をしているという話を聞かされることがありますが、このような会社は、金融商品取引業の登録は必要なく、今日現在、何の業者規制も存在しません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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