法定帳簿(1)


金融商品取引業者等は、金融商品取引契約について、帳簿や証ひょうを作成して保存することが義務付けられています。金融商品取引法でいう帳簿とは、仕訳帳など財務諸表を作成するための帳簿ではありません。金融商品取引業者等の間では「法定帳簿」と呼ばれている書類のことで、財務諸表を作成するための帳簿とは、目的が異なります。法定帳簿には複数の種類がありますが、まず、法定帳簿の共通点を確認しておきましょう。なお、法定帳簿の作成不備は、最悪の場合は懲役刑ですし、証券取引等監視委員会の検査でも複数の金融商品取引業者等が法定帳簿の不備を指摘されていますので、法定帳簿を正しく理解し、作成し、保存することは金融商品取引業者等にとって、とても大切なことです。

<法定帳簿の存在意義>
金融商品取引法に規定されている法定帳簿は、財務諸表を作成するための帳簿とは何が違うのでしょうか。兼用はできないのでしょうか。また、なぜ金融商品取引法は金融商品取引業者等に法定帳簿を作成することを、違反には刑事罰をもって義務付けているのでしょうか。

財務諸表は、会社の経営成績や財政状態を明らかにして、債権者の保護や株主の投資判断に役立てることを目的に作成されます。だから、会社法はすべての株式会社に最低でも貸借対照表の公表を義務付けています。財務諸表を作成するための帳簿は、最終的には、公表されるために作成されているわけです。

一方、金融商品取引法の法定帳簿は、作成と保存は義務付けられていますが、公表されることは、まったく想定されていません。法定帳簿は、金融商品取引業者の日々の業務を、後から振り返って確認することを目的にして作成されるものです。顧客から何月何日の何時何分に注文を受注したか、顧客との取引内容はどのようなものだったのかを記録しておくことは、取引の後、紛争があったときに、証拠書類として使用することができます。また、顧客の注文と会社(自己)の注文との間に、利益相反していないかを後で検証することもできます。

<検査目的>
金融商品取引法の法定帳簿は、項目が統一されています。言い換えると、同じ内容だからといって、様式が異なるものを作成しても、項目が漏れていれば、正しい法定帳簿ではなく、法定帳簿の不備になります。どうして項目が統一されているかというと、一つには、最低限の項目がないと、後で振り返って確認できないという事後検証の目的に使用できないという実務上の問題がありますが、最も重要な点は、法定帳簿は、証券取引等監視委員会の検査の目的でも作成されているからです。

証券取引等監視委員会が金融商品取引業者等を検査するとき、会社ごとに異なる帳簿を作成されたのでは、効率的な検査ができません。「この表とこの書類を合わせて注文伝票になります」と言われても、その突合せだけでも、検査において大変な労力が必要になってしまいます。効率的な検査は、検査が税金で行われている以上、当然求められるものです。検査の効率性を考えると、法定帳簿の様式も項目も統一的であることが求められるわけです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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