定義1


まもなく新入社員が入ってくる季節です。新入社員を採用された会社は、新入社員研修資料の最後の詰めに入っているころだと思います。

金融商品取引業者においては、新入社員に金融商品取引法に関する研修を行うことは必須です。

金融商品取引法に関する研修をする際に留意したいのは、実務に即して金融商品取引法を理解させることです。

新入社員に金融商品取引法の研修をするとき、最も重要な条文は、第2条の「定義」です。今回は、定義規定を実務に沿って解説します。

<発行者>
まず、発行者の理解が大切です。社債を例に出せばわかりやすいでしょう。社債の説明は省きますが、新入社員に説明する際には、社債とは企業がお金を集める手段の一つであることを説明しなければならないことはいうまでもありません。

発行者とは「社債を発行した者」と「社債を発行しようとする者」を指します。

社債を発行した者が発行者であることはわかりやすいのですが、まだ社債を発行していない者であっても、社債を発行しようとする者であれば発行者です。

見ようによっては不思議です。が、これから社債を発行しようとする者も発行者として定義しておかないと、他の金融商品取引業の説明が困難になります。だから、便宜上、(近い将来)社債を発行しようとする者も発行者と定義しています。

なお、金融商品取引法は、発行体のことを発行者といいますので、ここでも発行者と呼ぶことにします。

<発行日>
社債の発行日は、金融商品取引法に定義されていません。実務では、社債が売れようが売れまいが、発行日と定め日を発行日と呼ぶ慣習も見受けられるようですが、発行日とは、投資者の払込みがあった日と考えるべきでしょう。

払込みとは、社債を取得した投資者が社債を取得した代りにお金を支払うことです。「代わり」に支払うため、払い込んだ金銭のことを、「発行代り金」または「代り金」と呼ぶことがあります。

なお、金融商品取引法は、投資家のことを投資者といいますので、ここでも投資者と呼ぶことにします。

<募集と私募>
ここから多少難易度が上がります。

社債の募集や私募とは、これから社債を発行しようとする発行者が社債の取得勧誘をする行為です。

証券会社の行為ではありません。証券会社の行為を、募集とか私募とか呼ぶ方が大勢いますが、正しい使い方でありません。募集や私募を行うのは、あくまで発行者です。

社債の募集と私募は、発行者の募集と私募のことですから、「自己募集」(後述)のことです。ただ、金商法2条8項7号(後述)から社債の自己募集は金融商品取引業から除かれていますので、誰でも発行することができるわけです。

ここまで大丈夫でしょうか。

募集と私募は、普段、業務に慣れていらっしゃる証券会社の方にとっても、実は、難しい概念です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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