定義7


<1億円未満の社債の募集・売出し>

有価証券の売出しのうち、発行総額または売出し総額が1億円未満のものは特別の取扱いを受けていますので、取り上げておきます。

社債を5千万円発行または売出した例を考えてみます。

金商法4条1項5号、5条本文から、発行価額または売出し価額の総額が1億円未満の有価証券の募集または売出しで一定の条件を満たすものは、有価証券届出書の提出が不要です。

一定の要件には次のようなものがあります。

1. 募集や売出しの対象となる有価証券と同一種類の有価証券について、過去1年間に行われた募集や売出しの総額の合計が1億円未満であること

2. 募集の相手方の数が6か月通算で50名以上となった募集の場合は6か月通算で1億円未満であること

3. 売出しの相手方の数が1か月通算で50名以上となった売出しの場合は1か月通算で1億円未満であること、

4. 同時に行われた1億円未満の募集と売出しの総額が1億円未満であること

他にもありますが、要するに、発行総額や売出し総額が実質的にも1億円であることが要求されています。

以上の一定の要件を満たした募集や売出しを「特定募集」と呼びます。特定募集を利用するのは、中小企業が多いと思います。

私は、いつも、「金融商品取引法は、大企業や上場企業ばかりでなく、すべての企業に適用される」と言っていますが、特定募集もすべての企業に適用される金融商品取引法に規定される行為です。

特定募集をする企業は、使用する資料に金融商品取引法4条1項本文、2項本文、又は3項本文の規定の適用を受けないものである旨の表示をしなければなりません。法定開示が行われていないことを投資者に知らせるためです。

また、有価証券の発行者は、特定募集が開始される日の前日までに、有価証券通知書を財務局に提出しなければなりません。有価証券通知書は、法定開示の意味合いはなく、財務局の管理監督のために提出されるものです。

<在庫一覧表>
自社が持っている有価証券の一覧表を50名以上の適格機関投資家以外の投資家に配布する行為は売出しでしょうか。

在庫一覧表を配布する行為が売出しに該当するかどうかは、意見が分かれています。金融庁は、個別具体的な状況によっては売出しに該当するとしています。

在庫一覧表を配布する行為は、売出しと考えます。ただし、前述したように、社債の場合、売出しであっても、有価証券届出書の提出も目論見書の交付も不要ですので、平成21年改正以降、在庫一覧表の配布が売出しであるかどうかの議論をすることは、実務的には意味がなくなりました。

問題は、証券会社が作成・配布した在庫一覧表の有価証券を買い付けた証券会社の買付け行為が「元引受け」に該当するかどうかです。この点については、後述します。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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