法人関係情報の管理不備


金融商品取引業者等に対する処分事例は、「行政処分事例集」として、金融庁がホームページで一覧表を公表しています。最新の更新は、10月19日に行われました。以前にもお話しましたとおり、他社の行政処分事例を研究することは、会社のコンプライアンス態勢を強化するために必須です。今日紹介するのは、投資助言・代理業の登録を受けている金融商品取引業者に対する処分事例です。

<法人関係情報の管理不備>
金融商品取引法は、金融商品取引業者等に法人関係情報の適切な管理を義務付けています。法人関係情報を利用して投資勧誘をしたり、会社や従業員が取引をしたりすることは禁止されています。法人関係情報の管理は、基本的には第一種金融商品取引業の登録を受けている金融商品取引業者、つまり、証券会社に求められているものですが、他の金融商品取引業の登録を受けている会社も例外ではありません。


当社は、法人関係情報を取得した際は、コンプライアンス・オフィサーに報告することを社内規程に定めている。しかしながら、当該社内規程において法人関係情報の定義を明確化しておらず、これまで法人関係情報として報告されたものが1件もないなど、当社においては、法人関係情報の管理に係る内部管理態勢が機能していない状況にある。

要するに、「法人関係情報の管理規程はあったけれど、法人関係情報の定義も書いてないし、実際に利用されたためしがない」という点が指摘事項となっています。

ここで大切なことは、この会社は、投資助言・代理業の登録を受けた、いわゆる投資顧問会社ですが、きっちり法人関係情報に関する社内規則は作成していたということです。作成していたにもかかわらず、誰も法人関係情報をコンプライアンス・オフィサーに報告していなかったことが問題になっていますので、投資顧問会社であっても、法人関係情報に関する社内規則を作成することは当然の前提だということです。

<法人関係情報>
法人関係情報は、証券会社の役職員にとっては常識(であって欲しい)ですが、他の金融商品取引業者には、あまり馴染みがないかもしれません。

法人関係情報は、インサイダー情報にとても近いものですが、インサイダー情報よりも広い概念です。法人関係情報という集合の中に、インサイダー情報が含まれるということです。インサイダー情報につきましては、別の機会に詳しくお話しますので、今日は、法人関係情報についてのみ触れておきます。

法人関係情報とは、次のすべての条件を満たす情報のことをいいます。
1. 上場会社の情報
2. 未公表の情報
3. 投資判断に影響を与え得る情報

なんとなく漠然としていますが、漠然としていても、このような情報を管理する社内規則を作成することは、金融商品取引法上、金融商品取引業者等には必須です。投資顧問会社や投資運用会社は、上場会社の未公表の情報で投資判断に影響を与え得る情報、つまり法人関係情報を得る機会があることは容易に想像できますが、第二種金融商品取引業の登録を受けている会社であっても、法人関係情報を入手する可能性があります。特に、不動産信託受益権を取り扱う会社は要注意です。上場会社が、重要な財産である不動産を処分するという情報は、法人関係情報になり得るからです。

拙著「金融商品取引法対応マニュアル―すぐに使えるサンプル付き!」(住宅新報社)を書いたときに、法人関係情報に関する社内規則のサンプルを初めは書いていたのですが、途中で気が変わって、削除してしまいました(すみません)。法人関係情報に関する社内規則を作成していない金融商品取引業者の方は、法令を参考にして、すぐにでも作成することをお勧めします。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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