厚生年金金汚職事件


厚生年金基金の資産運用を巡る汚職事件で、証券取引等監視委員会は、投資助言・代理業者(投資運用業も兼務)に行政処分を行うよう金融庁に勧告しました。同社社長他が、厚生年金基金理事長らに過剰な接待を行っていたことが、金融商品取引法が禁じる「特別の利益の提供」に当たるという指摘です。

接待が、特別の利益の提供と判断された事例は、私の知る限り、本件が初です。本件が、特別の利益の提供とみなされた理由は、みなし公務員に対する接待だったからか、それとも、そもそも過剰な接待自体が、特別の利益の提供とみなされたのか、判然としません。

<特別の利益の提供>
特別の利益の提供とは、金融商品取引業者等が、顧客又は第三者に対して特別の利益を提供する行為を指し、金融商品取引法は、このような金融商品取引業者等による特別の利益の提供を禁止しています。

理由は、特別の利益の提供を許すと、顧客(投資家)が安易に取引をするため市場の公正な価格形成がゆがめられること、顧客との間のトラブルになりやすいこと、金融商品取引業者等の財務の健全性を損ねるおそれがあることなどです。

特別の利益の提供で注意しなければならない点は、本来、特別の利益の提供の禁止規定は、特別の利益、つまり、通常では考えられない利益を提供を禁止するものであって、提供する相手方の数に左右されないということです。

お中元は、通常考えられる程度の金額のものであれば、慣行の範囲内であって、特別の利益とは考えられませんが、通常と考えられる程度を逸脱したお中元は特別の利益とみなされるおそれがあります。

特別の利益とみなされると、それが特定の顧客に提供されたものであっても、取引先すべてに提供されたものであっても、金融商品取引法が禁止する特別の利益の提供に該当します。

この点、特定の顧客にのみ利益を提供することが特別の利益の提供であって、すべての顧客に同じサービスとして利益を提供すれば特別の利益の提供に当たらないと考える金融商品取引業者等がありますが、誤解です。

接待は、金額の多寡を問わず、特別の利益の提供だと考えられますが、金融商品取引法の運用としては、接待が過剰である場合に限り、特別の利益とみなされるようです。

各金融商品取引業等においては、接待限度額基準を定め、特別の利益の提供とみなされる接待を避けることが求められます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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